中学でいじめに遭い、インポスター症候群が悪化。メンタルヘルスを乗り越えるアプリを作った
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月7日 12時30分
7月4日、 パリ五輪は経済効果にも期待がかかっているが、実際には旅費や宿泊費の高騰、フランスの政情不安や治安への懸念から多くのスポーツファンや観光客がパリ行きを避けており、予約は低調だ。写真は6月、パリに掲示された五輪のポスター前を警備する警察官(2024年 ロイター/Pawel Kopczynski)
アナイア・シン(15歳、米カリフォルニア州在住) for WOMAN
<仲間外れにされ、悪口を言われ、「あんたは生きる価値ない」そんな冷酷なメッセージを送られた。今は高校1年生。助けてほしい人と助けたい人を結ぶP2Pのアプリを提供している>
5歳の頃の私に、小学6年生から直面することになるメンタルヘルスの難題について話をしたら、彼女は大きくなりたくないと思っただろう。
最近はかなりましになったけれど、中学時代のつらい経験は忘れられるものではない。ひどいいじめ、孤立、慢性的なストレス。私のメンタルヘルスの旅は苦しみのジェットコースターだった。
私は転校が多く、仲間外れにされ、意地悪くからかわれた。5年生から中学卒業までは、最悪のいじめを経験した。学年全体で20人ほどしかおらず、同級生は私に宿題をやらせ、悪口を言い、噂を流して、ほぼ毎日、怒鳴っていた。
6年生のとき、数人が私のメールアドレスを見つけて、「あんたは生きている価値がない」「誰からも愛されていない」など冷酷なメッセージを送ってきた。何回も言われるうちに、本当にそうなのだと思うようになった。自尊心の低さに苦しみ、いつも鬱の症状に襲われていた。
高校に入ると、慢性的なストレスは私の生活のあらゆる部分に浸透し、しょっちゅう体調を崩して家から出られなくなった。強いストレスは精神的にも肉体的にも私をむしばんだ。睡眠不足でいつも疲れていて、気持ちは焦るばかり。周囲から評価されても、自己肯定感が低いせいで否定的に捉えてしまうインポスター症候群に拍車がかかった。ゴールのないレースを走っているような気分だった。
たぶん、いちばん悲しかったのは、このような問題を1人で抱えていたことだ。
米疾病対策センター(CDC)の報告によると、長期にわたって悲しみや絶望感を抱くティーンエージャーは、2009年から19年にかけて40%も増加している。6年生の頃、私には頼れる人がいなかった。でも今は、私が必要としていた人に、私自身がなりつつある。
ポケットの中の友達
現在、私は高校1年生。10代の若者がメンタルヘルスの問題を乗り越える方法に革命を起こすアプリ「ハートトーク」を提供している。
これは音声メッセージで「命綱」を提供するP2P(ピア・トゥ・ピア)のアプリで、世界中の若者が互いに支え合うメッセージを録音したり聞いたりできる。つらいとき、ポケットの中に友人の慰めの声があるようなものだ。
ここで立ち止まるつもりはない。私の使命は、たくさんの人にメッセージを録音してもらい、世界中に支援の波を広げることだ。
アプリを宣伝するインスタグラムのアカウントには世界中から3000万人以上がアクセスしている。ベータ版は2、3週間で3000人以上のユーザーが体験した。
でも、数字より大切なのは、若い仲間が共有してくれる個人的なストーリーだ。15歳の少女は私にこんなふうに言った。「とても助けられている。こういうものがあって本当によかった。涙が止まらなかった。毎日が楽になった。友達や家族にも教えたい」
こういうストーリーがあるからこそ、私はアプリを作ったのだ。大勢のティーンに、1人で苦しまなくていいと伝えるために。
みんな誰かを助けたいと思っている。そういう人と、彼らを最も必要としている若者を結び付けることが私の使命だ。6年生の私に、あなたを助けたいと思っている人がいると伝えるために。
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