【写真特集】静かに朽ちゆく出羽島で生きる
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月25日 16時54分
木村が敢えて島民たちの顔を写さなかったのは、写真を見る人が自分自身と被写体を置き換えやすくするためだと 言う。出羽島に迫る「島じまい」か否かの選択は、人口減少社会に転じた日本に生きる全ての人に提起された正解のない命題だ。
片岡英子(本誌フォトエディター)
<写真集>
『TEBAJIMA』 (蛙企画)
写真: 木村肇
編集・執筆: 篠原匡
言語:日英併記
<写真展>
木村 肇 / 元吉 烈 作品展「Tebajima」
会期:2024年7月25日(木)〜8月4日(日)
時間:13:00-19:00(木金土日 最終日は18:00まで)
会場:OGU MAG+
詳細は上記リンク先をご覧ください。
【連載20周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
2024年7月16,24日号 掲載
⽥中幸寿 出羽島の部落会長を40年以上務める集落の長で、牟岐町漁業組合の組合長。島に初めて水道と電気が通った時の感動は忘れられない。人口減少の始まりは昭和40年前後と回想する。田中の世代が分家をする時に、狭い島には土地が足りず、人が流出した。再興のためのイベントや移住促進も行った。移住者を詮索しないよう努めてはいるが、小さな集落では「言いたくないことも言わないかんことがある」。漁業も努力だけでは立ち行かず、観光業も簡単ではない
(右)マグロ漁師をしていた頃の坂本栄三の姿。娘の留美子は出羽島育ちで、実家の重伝建指定を機に、22年に島に戻った
(左)島民が荷物の運搬手段として使う「ネコ車」。島が小さく車が通る道路がないため自動車やバイクはない
仲⼭丈⼆ 島に一時的に住んでいる大学生。出羽島からオンラインで大学の授業を受けている。インドネシアのバリ島生まれ。父が夏を過ごすための家を出羽島に購入し、子供の頃は定期的にここを訪れていた。 以前は朝4時頃になると多くの船が一斉にエンジンをかけて出航し、目覚まし時計代わりだった。2018年頃、12年ぶりに島に来た時には、様変わりしてとても静かになっていた。 漁が仕事だというのは理解しているが、楽しんでいるように見え、漁師に憧れる
原⽥素⼦ 出羽生まれの出羽育ちで、自らを「出羽の生え抜き」と呼ぶ。出羽漁協・夫人部の会長をしていた。中学校までは出羽島で過ごし、島外の高校で洋裁を習った。水道の開通前は、住民が井戸までバケツで水をくみに行き、運ぶうちに水量は半分になったという。 島のテングサの品質は高く、値段が高かったので、よく採集していたが、3年ほど前から全く採れなくなり、他の海藻も生えないのでアワビなども姿を消した。健康維持のための散歩が日課
新潟 潔 高校卒業後、神戸の銀行に勤めたが、当時漁師をしていた父親の体調が悪くなり、手伝いのために島に戻った。その後は漁業組合に勤めた。島の維持には、若い人に来てもらって力を借りないと、地域の活動ができないと言う。力仕事も困難。ここでは、72歳の自分が10番目くらいに若い。自宅が重伝建指定を受け、建物の修繕費の9割を国や自治体が負担するが、それは外観だけで内部は自腹。子供が住むなら修繕の価値はあるが、そうではないので難しい
(右)島には空き家が目立つ。朽ちた住居の撤去にも費用がかかるため、大部分はそのままになっている
(左)船着き場と神社の間にある松。神事の際にはこの木の周辺に大漁旗が飾られる
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