「よく知った人なのに誰だかわからない」──NATO首脳は前からバイデンの知力低下を知っていた
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月11日 18時19分
そればかりか、「何でも好き勝手にやってくれと(ロシアを)けしかける」、とまで言った。ロシアのウクライナ侵攻が始まって2年近く経とうとする時期に、アメリカの次期大統領になるかもしれない人間がそんな発言をしたことに、同盟国は肝をつぶした。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はトランプの発言に対し、NATO条約第5条には加盟国に対する攻撃はNATO全体に対する攻撃とみなすと明記されていると、記者会見で釘を刺した。
「今ワシントンを訪れている外国の指導者たちの圧倒的多数はバイデンの勝利を望んでいる」と、ブレマー は番組で語った。「ただ、今のところ首脳たちのほとんどがバイデンに勝ち目はないとみている」
首脳たちはブレマーに、バイデンが「同じ相手に同じエピソードを繰り返し語った」とか、「よく知る人に、まるで初対面のように挨拶した」と打ち明けたという。首脳たちの多くはこれまでさまざまな協議の場でバイデンと接触を重ねており、バイデンの知力の衰えを痛感しているようだ。
ブレマー によれば、首脳たちはバイデンが「あと4年の大統領職どころか、あと4カ月の選挙戦さえまともに戦えるかどうか」を危ぶんでいるという。「同盟国のよしみで、表立って口にしないだけだ」
アメリカ人以上に「もしトラ」を警戒
そうなると「もしトラ」への不安が膨らむ。「首脳会議ではもっぱらウクライナ支援について話し合っていると思うだろうが、アメリカを頼りにできなければ、NATOは深刻な事態に直面する」と、ブレマー は言う。NATOの最新の推定によれば、アメリカは2024年にNATOに自国のGDPの3.38%に当たる7550億ドルを拠出する予定だ。
ウクライナの惨状が人ごとではないロシア周辺の国々が加盟していることもあり、NATOはロシアの粘り勝ちを許すまいと、今回の首脳会議でウクライナへの支援強化を打ち出した。今の世界の政治状況では、欧州のNATO加盟国は「米大統領選の行方に、大半のアメリカ人よりもはるかに差し迫った危機感を抱いている」と、ブレマー は言う。「これは彼らにとっては掛け値なしに生きるか死ぬかの問題だ」
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