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朝日新聞の名文記者が「多読」を自慢しない理由【勉強法】

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月24日 7時15分

どうやって変えるか。わたしは、もうしつこく、あちこちで言ったり書いたりしているんですけれど、リストです。必読書リスト。リストこそが、〈勉強〉としての読書に必須の道具で
す。

どんなリストがいいのか。これも、前著『百冊で耕す』に詳述しているので参考にしてほしいです。いくつかリストをあげているし、わたし自身で作成した、おすすめリストも巻末にあります。それだけに限らず、あらゆるジャンルで必読書、つまり古典を選んでいる先輩読書家はいるものです。自分の気分にあったリストでいい。

近藤康太郎氏の抜書き帳。「リスト読み」やそれ以外の読書から厳選したフレーズを書き出している。30年以上続けている 撮影:朴敦史

「リストは完全制覇しろ」「すべて読め」とまでは言いません。言いませんが、まあ半分くらいは、読んだ、あるいは書店で、図書館で実際に手にした、というところまでは、がまんして付き合います。

リストとは、分かりやすく言うと、音楽でのプロデューサーですね(これで分かりやすくなってるかどうか、ちょっと自信がないですが)。ボブ・ディランでもだれでも、最初、ミュージシャンは自分たちの色を出したい。自分の音を追求する。好きなように歌い、楽器を弾き、ミックスする。しかし、それだけではだめだ、壁にぶち当たる。自分たちでも分かってくるんです。

自分を強制的に変えなければ未来はない

自分以外の才能を、外部から入れなければならない。それが外部プロデューサーです。外から知恵と知見を入れるんです。ディランは、スーパースターになったあとでも、たとえばダニエル・ラノワみたいな大物プロデューサーを起用する。「おれの新作をプロデュースしてくれ」って任せるんです。

ダニエル・ラノワは、当然、ディランの作品はリスペクトしている。いろいろと「こういうふうにするといいんじゃないか」とか、助言するわけです。でもディランはそれを無視したりするらしいんですよね。ダニエル・ラノワ、ものすごい傷ついただろうなって、笑っちゃうんだけど。

まあでも、そういうことですよ。自分を変えるってことです。外部プロデューサーを入れて、自分を強制的に変える。転がる石になる。

そして、必読書リストこそが外部プロデューサーです。自分の知っていることを、年間百冊も読まない。違う世界を知る。自分とは違う、世界のとらえ方を学ぶ。つまり、ベクトルを変えるんです。

◇ ◇ ◇

近藤康太郎(こんどう・こうたろう)

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