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欧州で人気上昇、レンタル式の学校や病院用施設 モジュール型で増設や撤去が可能

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月22日 18時50分

増設や撤去が可能なフィンランド・パルマコ社のモジュール型建築 (C)Parmaco Group

岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
<人口減少や温暖化などの問題に対応できる建築とは?>

2022年の温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas 気候変動に直接影響を与えるCO2や一酸化二窒素(N2O)など複数のガスの総称)は、中国、アメリカ、インド、EU27カ国、ロシア、ブラジルが6大排出国だ。別のGHGの国別ランキングではフィンランドは第62位と排出は少なめだが、さらなる減少を目指している。その実践の1つが、同国で少しずつ広まっている画期的なレンタル建築だ。

400軒以上の、サステナブルなレンタル建築

フィンランドのパルマコ社は、住民数の増減に合わせて学校や病院といった公共施設を簡単に増やしたり撤去する方法を広めている。設計から製作まで工場で行い、建設予定地で組み立てるモジュール式の建物だ。建設現場での天候に左右されないため工期が短くて済み、竣工も早い。住民が減り、不要になったときも撤去しやすい。これらの建物をレンタル契約で提供している。同社が建てたレンタル建築はすでに400軒以上に上る。

フィンランドの標準的な教室のサイズは55平方メートルだということで、同社ではそのサイズを基準モジュールにしているが、顧客のニーズに応じてスペースのデザインを変えることも可能だ。"レンタルで従来と変わらない快適さ"を追求しており、デザイン性の高さは、ヘルシンキの小学校とデイケアセンターの例からもうかがえる。この建物がレンタル建築だとは思えないだろう。顧客の満足度は高く、今春の同社の調査では、同社のレンタル建築に対して「非常に満足」「かなり満足」の回答が94%を占めた。

建材は軽量で、耐久性と断熱性に優れた特製スチールFIXEL(R)をメインに、国産の木材などを使っている。これらの建材はエコ志向で循環することを前提にしており、撤去後は別のレンタル建築に再利用される。また断熱性に加え、空間設計を工夫することで通常の建物よりも暖房が少なく済むため、建物を使っている間のCO2排出量は最大50%削減できるという。

フィンランドにおける2021年のGHG排出量全体(冒頭のサイト)を業種別に見ると、電気・ヒーティング業からは1680万トン、製造業・建築業からは724万トンが排出されている。パルマコの建築は、両分野の排出量削減にかなり貢献しているはずだ。

公立学校の例 月額レンタル料は約400万円

パルマコのレンタル建築が実際に使われている様子を見てみよう。ロシア国境に近いフィンランド東部の町イマトラの公立学校だ。イマトラの人口は今年4月末時点で約2万5千人。1~4月に43人が出生し、148人が亡くなり自然増減は105人の減少だった。また、この期間の転出入による増減は127人増だった。

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