3年後にロシア、中国、イランの脅威が交錯する...「戦争への備えを急げ」英陸軍参謀総長
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月27日 12時10分
感知できる範囲を2倍に拡大し、半分の時間で決断を下す。半分の数の弾薬を2倍の距離で有効に使って敵対国を圧倒する。ウクライナは近未来戦争の実験場だ。ウクライナ軍は安価で消耗品のようなセンサーとエフェクターを英国製ソフトウェアと組み合わせて成果を上げる。
英国と欧州の最大の脅威は米国の孤立主義
このハイブリッドで戦闘能力は3年後に倍になり、新しい戦闘システムがオンラインになれば3倍になる。「現代の戦術家はあらゆるレベルの技術者と手を組み、戦闘力を支えるシステムをスパイラルさせ、戦術に柔軟性を与えなければならない」とウォーカー陸軍参謀総長は説く。
しかし英国と欧州にとって最大の脅威は米国の孤立主義だ。首筋が日焼けで赤くなった「レッドネック」(白人貧困層)の悲哀を描いた自叙伝『ヒルビリー・エレジー』で注目を集めたJ・D・バンス上院議員が共和党の副大統領候補に指名され、欧州の不安はピークに達している。
ドナルド・トランプ前大統領を上回る強硬な孤立主義者バンス氏は「核兵器を保有する最初の真のイスラム主義国は労働党が政権を取った英国だろう」と発言し波紋を広げた。共和党の孤立主義者を率いるバンス氏は「米国はウクライナ支援をやめるべきだ」と唱える。
米国抜きのNATOは当てにできない。英国をはじめ欧州各国政府の台所事情は苦しい。財源の裏付けがなければウォーカー陸軍参謀総長が言う質の転換は「絵に描いた餅」に終わる。そもそもハードパワーを伴わない質に期待できるのか。欧州の安全保障を巡る苦悩は深い。
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