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パリ五輪のこの開会式を、なぜ東京は実現できなかったのか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月28日 11時34分

パリ五輪開会式で「愛の讃歌」を歌うセリーヌ・ディオン Kai PfaffenbachーREUTERS

北島 純
<スタジアムという「点」でなく、セーヌ川という「面」を舞台に設定したパリ五輪の開幕式は、「多様性」の表現を「愛」という概念で包摂して、祝祭的空間にまとめ上げることに成功した。「フランスの物語」が世界を感動させたが、なぜ3年前の東京大会でこれができなかったのか>

パリ五輪の開会式が26日夜(日本時間27日早朝)に行われた。高速鉄道TGVへの破壊工作が直前に発生し交通網が混乱、天候にも恵まれず時に雨が激しく降る中であったが、予定通りに開催され無事に終了した。

初めてメインスタジアムの外で開催された夏季五輪開会式だ。これまでにない革新的な構成が取られ、大きなインパクトを与える演出内容だったが、新しい試みに対する批判の声もあがっている。

確かに、選手団の川下りは「グダグダ感」を否めず、選手一人ひとりの様子もカメラ越しには良く分からないことが多かった。乗っている船の種類もバラバラで、選手団の規模によるセレクト・組み合わせとは言え、参加国の経済格差、国力の差を想起させるような危うさを感じた人もいたかもしれない。開催国フランスをのぞく全ての選手団が「パリのおのぼりさん」状態に見えてしまうような川下りが五輪開会式に本当に必要だったと言えるか、アイデア先行の無理やり感も残る。

中継放送に差し込まれる「動画」の演出内容も、一部の演出は明らかに大人向けであり「過激」で、宗教保守層やムスリム等の反発を買う内容も見受けられた。フランス流エスプリ(機知)の発露とも言えるかもしれないが、世界中から様々な立場のアスリートが参加する五輪の精神とそうした演出が整合的と言えるか疑問に思った人もいるだろう。パリを含めたフランスの「移民社会」が抱える様々な困難と課題は、言及すらされなかった。

しかし、それでも今回の開会式は画期的だったと言えるのではないか。

一つには、秀逸な舞台設定だ。セーヌ川両岸のパリ中心部エリアが広く式典の舞台として設定された。「点」ではなく「面」的な舞台が上手に構築されていた。

セーヌ川沿いの名所では歌唱や舞踊などのパフォーマンスが繰り広げられ、川面を「走る」馬が五輪旗を運び、ルーブル美術館近くのチュイルリー公園では聖火台となった気球が浮かび上がった。パリの象徴であるエッフェル塔はレーザー光線で美しく照射され、その中からセリーヌ・ディオンが「愛の讃歌」を歌い上げるクライマックス。

パリに特別な思い入れがある人も、そうでない人も、こうしたパリのランドスケープを使って「五輪に至るフランスの物語」を立体的に配置するような舞台設計には感心したのではないか。

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