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「テロリズム劇場」フランスに与える心理的打撃と五輪が標的にされる理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月30日 15時0分

近年では、オリンピック以外のスポーツ大会も標的になっている。

例えば18年のサッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会や、21年のサッカー欧州選手権(欧州11カ国で分散開催)。今年、米ニューヨーク州ロングアイランドで一部開催されたクリケットW杯も狙われた。

有名なスポーツ大会が狙われる理由の1つは、過激派が攻撃しやすい標的だからだ。

パリ同時テロの標的となったバタクラン劇場で犠牲者に花を手向ける(2015年11月) ABACA/AFLO

IS-Kが再び脅威に

ドイツの情報機関である連邦憲法擁護庁は今年のサッカー欧州選手権が開幕する前に、テロの警戒度はここ数年で最も高まっているとしていた。

この見解は、攻撃計画を示す確実な情報に基づいていたとみられる。欧州選手権に先立つ数カ月、ドイツではISや、特にアフガニスタンとパキスタンを拠点とする「ISホラサン州」(IS-K)とつながりがある数多くのテロ計画が阻止されていた。

開幕の1週間前には、欧州選手権を狙った攻撃を実行しようとした疑いで、ドイツとモロッコの国籍を持つ23歳の男がケルン・ボン空港で逮捕された。男はかつてISに送金をしており、試合会場の警備員に応募してもいた。

ジハード(イスラム聖戦)を動機とするテロは19〜22年に全体として減少したが、筆者らの調査によればIS-Kは再び大きな脅威となっている。

この組織の公式メディア機関アルアザイムは、オリンピックなど西側諸国で開催されるスポーツ大会を狙うと何度か予告している。

ISもIS-Kも最近、フランスを標的にしている。22年11月にはテロ攻撃を計画したとして東部の都市ストラスブールで7人が逮捕され、今年4〜6月だけでも3件の計画が阻止された。

これらの計画の標的がオリンピックに関連していたかどうかは不明だが、少なくとも16歳の容疑者1人がSNSにオリンピックを攻撃したいと投稿していたことが分かっている。

フランス当局は3月、差し迫った攻撃の情報に基づいてテロ警戒レベルを最高度に引き上げた。フランスの各当局は諸外国の支援を受けつつ最大限の警戒態勢を敷き、対ドローンシステムや最新鋭の防空システムなどの先進技術も導入して大会に備えてきた。

オリンピック開幕まで3週間を切った7月6日には、フランス当局がIS-Kのメンバーとみられる数人を逮捕したと発表。オリンピックを狙った自爆テロを計画した容疑だった。さらに13日には、テロを計画したとして国内各地で未成年者が計4人、成人が1人逮捕されたと報じられた。

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