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ウクライナ地上軍がロシアに初の大規模侵攻、ロシア軍はなぜ来ない?

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月8日 18時57分

ウクライナ軍の地上侵攻3日目になってようやく口を開いたプーチン(写真は7月31日、モスクワ) Sputnik/Gavriil Grigorov/REUTERS

イザベル・バンブルーゲン
<長く防戦一方だったウクライナ軍が、ロシア国境のクルスク州に侵攻し、猛攻を仕掛けている。国境地帯にウクライナ軍が集結し、攻めてくるのは「わかっていたのに」と、ロシアのブロガーは憤る>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月7日、遅ればせながら沈黙を破り、西部クルスク州にウクライナ軍が越境攻撃を仕掛けたことを認め、この侵攻を「大規模な挑発」と呼んで強く非難した。

【動画】ロシアが実施した過去最大級の「戦車攻撃」...ウクライナ空挺部隊が連続爆撃で「撃退」するシーン

「クルスク地域で起きていることをこれ以上看過できない」と、プーチンは国家安全保障会議で述べた。「知ってのとおり、ウクライナはまたもや大規模な挑発を仕掛け、ミサイルを含む各種兵器で民間の建物、住宅、救急車などを無差別に攻撃している」



ウクライナ軍の地上部隊と装甲車両が6日、ウクライナ北東部のスームィ州と国境を接するロシアのクルスク州に侵攻。激しい戦闘が勃発した。過去にもウクライナに拠点を置く反プーチンのロシア人武装組織がクルスク州の南のベルゴロド州に侵攻したことはあるが、ウクライナ軍が越境攻撃に踏み切ったのはこれが初めてだ。

ウクライナ軍はロシア領内にかなり深く進軍したと伝えられているが、プーチンとロシア国防省はこれを認めていない。

国境地帯は「この世の地獄」に

「空爆、ミサイル攻撃、砲撃、クルスク州で国境防衛に当たる部隊の迅速な対応で、敵がロシア連邦領内に深く侵入することは阻止できた」と、ロシア国防省は7日発表の声明で述べた。

クルスク州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は、メッセージアプリのテレグラムで、戦闘に巻き込まれて民間人5人が死亡し、20人が負傷したと報告。州内に非常事態を宣言した。

州当局によれば、既に数千人の住民が国境地帯から避難したという。

ロシア国防省の元職員ミハイル・ズビンチュクが設立したテレグラムチャンネル「Rybar」によると、ウクライナ軍はクルスク州内の3つの村、ニコラエボ・ダリノ、ダリノ、スベルドリコボを掌握したという。

ロシアの他の軍事ブロガー数人もテレグラムで、いくつかの村が奪われたと伝え、侵攻は前々から準備されていたとして、「この世の地獄」のような惨状を招いたクレムリンの後手対応を痛烈に批判している。

「ウクライナ軍がクルスク州に侵攻するのは見え見えだった」と、ロシアのウクライナ侵攻を支持するブロガーのアナスタシア・カッシェバロワはテレグラムに投稿した。ウクライナ軍が国境地帯に「兵力を結集していることも分かっていた。毎度のことながら、私たちには何もかも分かっていて、現地の兵士もちゃんと報告したのに、上層部は何もしなかった」。

「(侵攻軍の)部隊がわれらの領土を動き回っている。だが、わが部隊は見当たらず、歩兵もいない」と嘆いたのは、テレグラムのチャンネル「コールサインOSETIN」だ。「大砲も戦車も、何の装備もない。誰もこの事態に備えていなかったのか。稼働しているのは飛行隊とオペレーター、前線航空管制官、それに国境警備隊くらいのものだ」



軍事ブロガーのRavrebaは、クレムリンはこの状況を「完全に無視している」と吐き捨てた。

「ロシアの新しい国防相(アンドレイ・ベロウソフ)は、ムチか斧で脅されなければ腰を上げない将軍たちをどやしつけるよりも、祖父たちが盗んだ資産を勘定するほうが気楽なのだろう」

プーチンは国家安全保障会議後、国防省の当局者、ロシア連邦保安局(FSB)の国境警備隊、それにバレリー・ゲラシモフ軍参謀総長と個別に会い、現状について協議すると述べた。



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