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なぜ、アイリスオーヤマは「ピンチ」のときにこそ業績が飛躍的に伸びるのか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月27日 19時16分

会社経営を「野球型」から「サッカー型」に変えよう

──本書では「想像すること」がマネジメントの根幹だとありました。規模の拡大に伴い、社員を想像することが難しくなる局面を迎えた企業もありますが、そうした企業を変えていくには、大山会長ならどんな解決策を講じていかれますか。

アイリスオーヤマも国内の正社員だけで5000人、海外も含めると1万5000人規模の企業ですので、どうしてもセクショナリズムに陥りそうになることがあります。それを防ぐために、社内では飲み会も旅行も運動会もできるだけ継続しようといっているんです。一緒に時間を過ごすことで、人と人との間には必ず情が生まれますから。

私自身、できるだけ社員の様子を見て、想像できるようにと考えています。普段から社員食堂で社員と一緒に食べているというと、驚かれますね。出張先ではオフィスや工場を一通り全部まわるようにしています。

私は会社経営を「野球型」から「サッカー型」にしようと提案しています。野球の試合は2時間半で終わるときもあれば4時間もかかるときもある。サッカーは90分でピシャっと終わる。だから決められた時間内にどうやって勝つか、そのために何が大事かという発想に立つようになる。つまり「決められた時間内に、いかに生産性を上げるか」ということです。

また、現在の野球は円陣を組まないし、選手は出番がくるまでベンチにすわっていて、個人主義的です。一方サッカーは、11人の選手が一緒に勝利をめざす。各ポジションが連携するからこそ、フォワードがゴールを入れられる。そうしたチームでの連携が求められる「サッカー型」の会社経営をめざしていきたいですね。

「常に本質的、多面的、長期的に考える」

──大山会長の生き方や経営哲学に影響を与えた本は何でしたか。

これまでドラッカーなど色々な本を読み、参考にしてきました。とても本質的だと感じたのは、日本の思想家・安岡正篤さんの『運命を開く』という本です。

この本から得た「常に本質的(根本的)、多面的、長期的に考える」という思考の三原則がアイリスオーヤマの基本になっています。まず「本質的」とは、何のために会社があるのか、何のためにこの商品を開発するのか、とその意味を常に考え続けること。そのなかで行きついたのが企業理念第1条の「会社の目的は永遠に存続すること」です。

次に「多面的」とは、色々な業界の、色々な競争を見ておき、その知見を蓄積するということです。そして「長期的」なスパンで考えよう、と。目先の効率化ではなく、いつでも利益を出し続けられるように、景気・不景気を問わず、毎年新しい事業の種まきをするという発想の原点には、このフレーズがあります。

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