実は暴動の多いイギリスで、極右暴動が暴いた移民問題の真実
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月28日 18時58分
この手の事件では、初期の段階では「おそらくテロの意図はない」と発表され、次いで別の理由が持ち上がり(「精神疾患の病歴があった」というのはよくある説明だ)、わが国に強い憎悪を抱いているかもしれないマイノリティーの手で犯罪が起こったという事実を覆い隠すかのように、容疑者は「地元カーディフ生まれ」とか「帰化した英国市民」などと強調されるのがお決まりのパターンだ。
ジャーナリストのダグラス・マレーの言葉を借りれば、当局はまるで、「大衆」と「事実」の間に入って仲裁するのが仕事だと思っているようだ。
もちろん、残虐行為がどう見てもテロ攻撃である場合は、そうした説明も成り立たない。たとえば2017年のマンチェスター・アリーナでの爆発テロ事件や、2021年の議員殺害事件、ロンドン路上で英兵士が首を切られて殺害された2013年の事件、2017年のロンドン橋での襲撃事件、「イギリス版9・11」である2005年のロンドン地下鉄・バス同時爆破テロ、2020年の南部レディングの公園での刺殺事件......。これらは全て、移民(亡命申請が認められた人から英国生まれ・育ちの2世に至るまで)の手による犯行だった。
だから、「サウスポートの事件がシリア難民の犯行だと考えている暴徒は間違い」だというのは正しいが、だからといって「移民とテロとの間に関係は何もない」とはならないのだ。
第4に、今回の暴動は、移民の一層の増加を望むごくごく一部のイギリス人にとっては恩恵となった。今や「見ろ、これこそ移民反対派の素顔だ」と言えるようになったからだ。「人種差別の悪党としか言えないじゃないか」と。
この主張は、大多数のイギリス人が暴動に愕然とし、人種ヘイトを非難し、それでも同時に大量の無秩序な移民受け入れには反対している、という事実を無視している。
人々が大規模で急速な人口動態の変化に懸念を抱くのはもっともなことで、世論調査ではイギリス人の過半数が移民の増加ペースが急激すぎると感じている。移民は2022年と2023年だけでイギリス人口に130万人を上乗せした(ブリストルとレスターを合わせた人口に匹敵)。これは、移民純増を年間10万以下に抑えるとの目標を掲げて2010年に政権復帰した保守党政権下で起こった出来事なのだ。
イギリスは、これほど急激な人口増加に対処できるほどの住宅や学校、医療を賄えない。システムに負荷がかかっている。
女性器切除や名誉殺人...以前は存在しなかった問題が
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