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重病説、求心力低下説、失脚説......「ポスト習近平」の中国に備えるべき時が来た

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月28日 10時55分

トー・ラム書記長を迎えた習 ANI PHOTOーREUTERS

何年か前から習は脳動脈瘤を抱えているのではないかと噂されていた。これは脳動脈の一部が膨れ、血管壁が薄くなって破裂する危険性がある病気だ。破裂すれば脳内出血で死に至ることもある。だが習は手術を拒み、漢方薬による治療を選択した。この病気では視力低下や平衡感覚の乱れなどの症状が出るが、習は最近カメラの前で転びそうになることがよくある。

過去10年ほどの間に習は何度か、今回同様、公の場から姿を消したが、たいてい2週間ほどで戻ってきた。それらも病状悪化のせいだったのかもしれない。今回は約3週間の不在だったので、かなり危険な状態だった可能性もある。

そうなると当然、習が亡くなる事態も想定しなければならない。その場合、中国と世界にどんな影響が及ぶのか。

健康状態が徐々に悪化しても、習は権力の座にしがみつくかもしれない。だが気力や体力の衰えが目立つようになれば、上層部では跡目争いが激化するだろう。結果、党の結束が乱れ、方向性が失われかねない。習が久々に姿を現した際のメディアの報道が慣例と違ったのも、その表れかもしれない。一方で、習が体調悪化に耐えられず、早々に辞任する可能性もある。ポスト習の中国はどうなるのか。

後継者については両極端のシナリオが考えられる。「改革派」が政権を握るか、引き続き強硬派が居座るか、だ。

両派の妥協もあり得るが、共産党の体質からすれば、いずれどちらかに傾くだろう。習自身、当初は両派の交渉の「落としどころ」として政権の座に就いたのだ。

跡目争いのシナリオ

跡目争いの行方を占う上で、見逃せない点は次の2つだ。

まず、現在の中国共産党中央委員会のメンバー205人の平均年齢は59歳。つまり彼らの多くは毛沢東が文化大革命を始めた1965年前後に生まれたことになる。その当時の彼らの親の年齢は30歳前後だろうから、文革を率いた造反派のリーダーだったとしてもおかしくない。言い換えれば、今の党中央委のメンバーの多くは過激な共産主義者に育てられた、ということだ。この層が党内における習の最も忠実な支持者となっている。

毛沢東ばりの強権支配で鳴らした習が去った後、中国はどこに向かうか。写真は1967年秋に紅衛兵を閲兵する毛 REUTERS

第2に、2022年の第20回党大会から10〜20年時間を巻き戻すと胡錦濤(フー・チンタオ)と江沢民(チアン・ツォーミン)の時代になる。この時代の党中央委のメンバーは全て改革派だった。彼らの親の世代はおおむね文革の犠牲者。つまり過激な共産主義に痛めつけられた世代の子供たちが改革派になったわけだ。改革派は過去10〜20年で権力中枢からほぼ排除された。彼らは現在75〜80歳で実権を取り戻すには年を取りすぎている。

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