インフレと金利上昇で揺れる不動産市場...「持ち家」「賃貸」論争に変化の兆し?
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月30日 14時0分
実際、1億円以下の一般的なマンションを新たに購入している人の大半は自己居住目的である。今後さらに物件価格が上がれば、ますます持ち家の確保が難しくなる。もう買うチャンスがなくなると考えた一部の消費者は、夫婦共働きで長期のペアローンを組み、親から頭金などの援助を受け、かなり無理をして物件を購入している。比較的所得が高めの世帯が、ギリギリでローンを組んで買うというのが、新規購入者のリアルな姿と考えてよい。
米国の不動産価格と可処分所得の推移 ILLUSTRATION BY DROGATNEV/ISTOCK (BACKGROUND)
日銀は7月の金融政策決定会合において追加利上げを決定し、継続的な金利引き上げ姿勢を鮮明にした。これによって円安に一定の歯止めがかかる可能性が高まっており、そうなれば物件価格の高騰も多少は落ち着くかもしれない。だが、日銀が正常化に向けて本格的に舵を切ったということは、今後、金利が大幅に上昇することを意味しており、住宅ローンの利用者にとっては厳しい状況となる。
ローン返済にはどんな影響が
日本の場合、住宅ローン利用者の大半が変動金利となっており、金利が上昇すると支払額もそれに合わせて増えることになる。余裕のある世帯では大きな問題にならないだろうが、収入ギリギリでローンを組んでいる場合、ローンを返済できなくなるケースが出てくる可能性が否定できない。
変動金利の住宅ローンの場合、実際に金利が上がってから返済額が増えるまで5年間の猶予があり、1回の支払額増加は25%以内にするという救済措置が盛り込まれているので、すぐに金額が増えるわけではない。しかしながら、増加した支払額はローン終了までには一括返済しなければならず、最終的にローン利用者が負担することに変わりはない。
加えて言うと、一定期間(10年など)金利が固定されており、その後、変動金利に移行するような、いわゆる固定期間選択型商品の場合、救済措置が組み込まれていないケースがあるので注意が必要だ。こうしたローンを組んでいる場合、金利上昇分がそのまま支払額の増加につながるので、余裕のない世帯にとっては返済が滞るリスクがある。
いずれにせよ不動産価格の下落が続き、家賃も低い水準で抑えられていたバブル崩壊後の30年間とは状況が大きく変わっており、不動産に対する根本的な価値観の転換が迫られていることだけは間違いない。
もっとも戦後の日本において不動産に対する価値観が激変するのは2度目のことである。
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