大学の都市部への偏在が、日本の地域格差をさらに助長する
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月5日 15時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
<全国の大学入学者の約4割が首都圏の大学に入学しているのが現実で、地方から都市への若年層流出の原因になっている>
大学が地域的に偏在しているのはよく知られている。具体的に言うと、都市部への偏在だ。2023年春の4年制大学入学者は63万2902人だが、うち26万182人(41.1%)が首都圏(1都3県)の大学に入っている。
東京都内の大学への入学者は15万7086人。東京だけで、全入学者の4分の1が占められていることになる。大学の都市集中はすさまじい。裏返すと地方には大学が少ないわけで、大学教育機会の地域格差や、地方から都市への若年層流出の原因となっている。
地域に大学教育の機会がどれほどあるかを可視化する指標として、大学収容力がある。18歳人口100人に対し、大学入学枠がいくつあるかだ。18歳人口は、3年前の中学校・義務教育学校・中等教育学校前期課程卒業者数で表せる。大学入学枠は、地域内の大学への入学者数で代替できる。この2つを都道府県別に集め、各県の大学収容力を算出すると<表1>のようになる。
18歳人口より大学入学枠が多い京都と東京では100%を超える。18歳人口全員が座っても、まだイスが有り余る。大阪は75%で、4人に3個のイスが用意されている。対して地方では値が低く、筆者の郷里の鹿児島では4人に1個、最も低い三重では5人に1個しかない。
大学収容力が高い地域では、自宅から大学に通うことが容易だ。また大学生を目にする機会も多く、大学がどういう所か、何をする所かを具体的にイメージでき、高校卒業後の進路の選択肢として大学進学が入ってきやすい。地方はその反対だ。
当然ながら、各県の大学収容力<表1>は大学進学率と強く相関している。<図1>は、この2つの相関図だ。大学進学率は、18歳人口ベースの浪人込みの進学率をさす。計算方法の詳細は、別記事を参照されたい(「大学進学率50%のウラにある男女差と地域格差」本サイト、2024年1月10日)。
傾向は右上がりで、大学収容力が高い県ほど大学進学率が高い。各県の大学進学率は、県民所得や親世代の大卒率よりも、大学収容力と強く相関している。大学進学チャンスの地域格差の要因として、大学の地域的偏在は大きいようだ。
各県の大学収容力と大学進学率を男女別に計算し、相関係数を出すと、男子では+0.6941、女子では+0.7918となる。女子の場合、自宅通学の可否が考慮されることが多いためだろう。
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