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『エイリアン』最新作の小さすぎる野心...監督は「殺害シーンにだけ関心アリ」?

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月6日 14時6分

アンドロイドのアッシュは79年の第1作で破壊されたが、利用できるキャラクターを利用しない手はない、という発想なのだろう。ホルム自身も2020年に死去しているが、『ロムルス』では、AI(人工知能)を活用して亡きホルムの姿と声を生成し、「出演」させた。

『エイリアン』シリーズ全体に共通する要素の1つは、巨大複合企業のウェイランド・ユタニ社がひたすら利益追求に走り、人命を軽んじることだ。その点、『ロムルス』の場合は、作品そのものがウェイランド・ユタニ社の制作物のように感じられる。非人間的である上に、冷酷なまでに効率が重視されているからだ。

『エイリアン:ロムルス』の場面写真、ケイリー・スピーニー演じるレイン・キャラダインとデービッド・ジョンソン演じるアンドロイドのアンディ ©2024 20TH CENTURY STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

過酷な環境の惑星で、鉱山労働者として過酷な労働に従事する女性、レイン・キャラダイン(ケイリー・スピーニー)が仲間と一緒に脱出を計画する。使われなくなった宇宙ステーションで冷凍休眠装置を奪い、それを使って別の惑星に向かおうというのだ。

ところが、その宇宙ステーションで遭遇するのが......そう、エイリアンだ。このとき、レインたちの前にアッシュとよく似たアンドロイドのルークが登場する。

『エイリアン』シリーズの作品には、生きることの意味という壮大なテーマもあるが、本質的には宇宙を舞台にしたホラー作品だ。

エイリアンたちは、ホラー映画でおのを振り回すモンスターと同じように、自分たちの目的を追求することに──ほかの生物の種を殲滅し、自分たちの仲間を増やすことに──ただただ邁進する。

ホラー作品ではその性格上、どうしても殺人者を愛することになる。第1作の『エイリアン』で早くもアッシュが称賛交じりに、宇宙船の乗組員のほとんどを抹殺したモンスターを「完璧な生命体」と呼んでいる。

第6作『エイリアン:コヴェナント』に至っては、エイリアン側の視点に立った描写も目につく。弱肉強食のハリウッドの映画産業において、勝者になったのは明らかにエイリアンだったのである。

アルバレスは、自らがつくり上げた世界がどのように受け取られるかをあまり考えていないように見えることが多い。関心があるのは、もっぱら次の殺害シーンだけだからなのかもしれない。

レインの世話をすることが最大の任務とされるアンドロイドのアンディを演じるのは、主要キャストで唯一の黒人俳優デービッド・ジョンソンだ。奴隷制の歴史を考えると、この設定は果たして......。

ルークがアンディに対してウェイランド・ユタニ社の謝意を述べる場面でも、こんなセリフがある。「あなたの型(のアンドロイド)は、われわれの植民活動の屋台骨を担ってきた」

アルバレスはおそらく、『エイリアン』シリーズの歴代監督の中で最も自己表現への野心が小さい監督と言えるだろう。そして、閉鎖空間を舞台にしたスリラー映画作りのスキルも傑出している。

しかし、この作品はそれなりに成功しているのかもしれないが、そもそも大きな志を抱いておらず、既存のシリーズの枠内にとどまることでよしとしているのを見ると、少しがっかりしてしまう。

『ロムルス』は、『エイリアン』シリーズの過去作の突然変異ではない。単なる近親交配だ。

©2024 The Slate Group

ALIEN: ROMULUS
『エイリアン:ロムルス』
監督/フェデ・アルバレス
主演/ケイリー・スピーニー、デービッド・ジョンソン
日本公開は9月6日

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