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民間人4人を乗せた「ポラリス・ドーン」ミッション、スペースXが挑む初の商業船外活動

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月13日 12時20分

民間初の船外活動を目指すSpaceX Sven Piper-Unsplash

ジェス・トムソン
<スペースXは民間人4人を乗せたロケットを打ち上げ、商業船外活動の歴史的挑戦に挑む>

9月10日早朝、スペースXが民間人4人を乗せたロケットを打ち上げた。民間企業初の船外活動を予定している。

「ポラリス・ドーン」ミッションのスペースX製ロケット「ファルコン9」は米東部時間の午前5時23分、フロリダ州にある米航空宇宙局(NASA)のケネディ宇宙センター39A発射台から打ち上げられた。「レジリエンス」と命名されたスペースXの宇宙船クルードラゴンには民間人4人が搭乗している。

乗員を率いるビリオネア

乗員を率いるのはシフト4・ペイメンツのCEOでビリオネアのジャレッド・アイザックマン(自身の有人飛行プロジェクト「ポラリス・プログラム」の一環としてスペースXから3回のミッションを購入)。今回のミッションではアポロ計画以来、地球から最も遠くへ人類を到達させ、民間人による初の船外活動実施を目指す。

残る3人はアメリカ空軍を引退した元パイロットのスコット・ポティート、スペースXの宇宙航行エンジニアを務めるサラ・ギリスとアナ・メノンが搭乗する。

「今回のドラゴンミッションは、ファルコン9とドラゴンの性能を最大限に活用し、これまでのどのドラゴンミッションよりも高く飛び、これまでに飛行した中で最も高い地球軌道への到達を目指す」。ポラリス・ドーンの公式サイトはそう記している。

「地球のおよそ700キロ上空で、乗員は史上初の商業船外活動(EVA)に挑む。スペースXがデザインした船外活動(EVA)宇宙服は、現在の船内(IVA)宇宙服からアップグレードした」

ロケットは地球周回軌道に突入し、地球の周回速度の時速1万7000マイルに到達。数日かけて地球を周回しながら徐々に地球から遠ざかる。

最初の数周は、遠地点(地球からの距離が最も遠くなる点)が約745マイルの楕円軌道に乗り、その後徐々に遠地点を広げて870マイルに達する。この時点で、1966年のジェミニ11計画で記録した853マイルを抜き、人類を月へ送り込んだアポロ計画の終了以来、有人飛行としては地球から最も遠く離れる。宇宙を旅した女性が地球から最も遠く離れた記録も更新される。

この間に宇宙船は地球のヴァン・アレン放射線帯に突入する。太陽や宇宙線からのエネルギー粒子を閉じ込めたこの空間は、放射線に満ちている。

2日目には軌道のサイズを縮小して地球からの最大距離は約435マイルに戻り、3日目に民間初の船外活動(EVA)を実施する。完全に船外に出るのはアイザックマンとギリスのみだが、同宇宙船にはエアロックがないことから、4人全員が宇宙服を着て宇宙の真空にさらされる。船外活動は約2時間の予定で、スペースXの新しいEVA宇宙服の機能をテストする。同時に宇宙の真空状態にいる人数の記録もこれで破られる。

打ち上げ6日後にフロリダ着

打ち上げは当初8月下旬に予定されていたが、天候不良や発射台の技術的問題のため延期された。10日の打ち上げも、悪天候で予定より2時間遅れとなった。

打ち上げの6日後、宇宙船は大気圏に突入し、パラシュートでフロリダ州沖の海上に着水する。この時も気象条件が整う必要がある。

「地上の1万4000人の皆さん、そして応援してくれる皆さんがいなければ、この旅はかなわなかった」。アイザックマンはクルードラゴンが軌道に入ると間もなく、スペースXの管制室にそう語った。「そのことに感謝する。我々はこれから仕事に取り掛かる」

(翻訳:鈴木聖子)

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