プーチンと並び立つ「悪」ネタニヤフは、「除け者国家」イスラエルを国連演説で救えるか
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月26日 18時15分
「ネタニヤフは国連での演説などを強みとしている」と、ジョージタウン大学とテルアビブ大学の国際関係学の教授であるヨシ・シェインは言う。「国外で演説をするときはたいがい、国際社会だけでなく、国内世論受けも狙って、原稿を練りに練る」
過去の国連演説では、ネタニヤフは劇的な効果を狙って、「ここぞ」という時に図を見せ、聴衆を沸かせて、メディアに大きく取り上げられてきた。2012年にはイランの核開発の危険性を爆弾にたとえた分かりやすい図を見せ、2009年にはナチスのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)計画を記した書類のコピーを提示し、「ホロコーストはなかった」と主張する反ユダヤ主義をやり込めた。
昨年の国連演説で披露したのは、「新しい中東の地図」だ。ネタニヤフはパレスチナ紛争が解決しなくても中東和平は実現できるとばかり、サウジアラビアと国交正常化交渉を進めていることを誇らしげに語り、演説の中で42回も「和平」という言葉を使った。だが、この地図では、パレスチナ自治区のガザとヨルダン川西岸は完全にイスラエルに統合された形になっていた。
そして今年、ネタニヤフは自身と自国が国際世論の逆風にさらされる中で、国連総会の演壇に立つことになる。いくら演説がうまくても、今回は外交的な得点は稼げそうにない。
「スピーチの演出は名人級だ」と断った上で、イスラエルの政治コメンテーター、タル・シュナイダーはこう付け加える。「英語のスピーチで自分の視点を世界に受け入れさせるには、今の彼の立ち位置は世界の趨勢からあまりにもかけ離れている」
今回の演説について、イスラエル首相府はコメントを控えているが、ネタニヤフと親しいイスラエルのミキ・ゾハル文化スポーツ相は、イスラエルが国際社会の支持を得るために、国連総会は「重要な舞台」となると述べている。
ネタニヤフは今回も国連で毎度おなじみの主張を繰り返すだろう。ガザやヒズボラに対する攻撃は「自衛権の行使」であり、中東の政情不安の原因はイランにある、というものだ。ヒズボラとの攻撃応酬が激化する中で、あえてニューヨークに向かうと決断したことが、国連での演説をことのほか重視していることを物語る。
しかし世界がイスラエルの軍事作戦にイラ立ちを募らせる今、ネタニヤフの主張がどれほど共感を呼ぶかは大いに疑問だ。
「ネタニヤフは国連演説で歴史をつくってきたと本気で自負しているが、それは勘違いだ」と、元ニューヨーク駐在イスラエル総領事のアロン・ピンカスは手厳しい。「イスラエルは今や国際社会から疎外されたパーリア(除け者)国家になりつつあり、ネタニヤフは血に飢えた好戦的指導者と見なされている」
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