原点は「ナチスの純血思想」...オーストリアで自由党が第1党に 今や「極右」は欧州政治の主流に
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月1日 19時19分
戦後オーストリアがナチスやドイツの影の一掃に努める中、自由党は1956年、元ナチス党員や汎ゲルマン主義者を中心に結党された。反移民、欧州懐疑主義、ナチス時代の政策を称賛する故イェルク・ハイダー党首(任期86~2000年)の下で党勢を広げた。
2000年に自由党が国民党との連立で政権入りした際には国際的非難が巻き起こり、EU諸国が一時的に外交制裁を発動した。17年にも国民党主導で連立政権を樹立している。主に裏方を務めてきたキクル氏はハイダー氏のようなカリスマ性に欠けるが、その毒舌ぶりで人気を集める。
ナチスの過去を美化する自由党のキクル党首
アレクサンダー・ファン・デア・ベレン大統領を「老いぼれのミイラ」と罵倒。ナチスがオーストリアを併合した後、アドルフ・ヒトラーが「ドイツ帝国への復帰」を宣言した歴史的なウィーンのバルコニーを選挙運動ビデオで紹介し、ナチスの過去を美化していると批判された。
キクル氏は自らをヒトラーが名乗っていた「フォルクスカンツラー(人民宰相)」と呼ぶ。「要塞オーストリア」計画は、同化に失敗したとみなされる中東・アフリカの非欧州系移民を大量追放・強制送還する「再移住」の派生形と言える。
「再移住」の原点はナチスの純血思想。自由党の主張は多文化主義が国家のアイデンティティー、文化、社会的一体性を脅かすという極右思想と連動する。自由党が得票率25.4%で初めて全国トップになった6月の欧州議会選では多くのEU加盟国で極右政党が躍進した。
極右は間違いなく欧州政治の主流の一つになった。
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