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【写真特集】対立と隔絶と ノアの方舟伝説の地は今

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月11日 16時31分

アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェバンでハーブ摘みをする3人の男性。背後のイランダ山は、この地にたどり着いたノアの方舟が山頂を削ったとの伝説で知られる

Picture Power
<旧約聖書「創世記」のノアの方舟伝説で知られる、アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェバン。数十年にわたる周囲から隔絶された土地に暮らす、深甚な孤独とは>

 アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェバン自治共和国は、対立するアルメニアを挟んだ陸の孤島だ。アゼルバイジャン支配下ながらアルメニア人が多数を占める紛争地ナゴルノカラバフと対を成す存在だが、その名は知られていない。

 両国の長年の緊張ゆえ、ナヒチェバンは数十年にわたり周囲から隔絶されてきた。イラン、トルコとも国境を接するが、この地はトルコ経由かアゼルバイジャンからの空路でしかたどり着けない。1965年に人類初の宇宙遊泳を成功させたソ連の宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフは、高山と輝く湖水、広大な砂漠に彩られたナヒチェバンの絶景に驚嘆したという。国名の由来は「着陸の地」とも言われ、ノアの方舟がこの地にたどり着いた伝説で知られている。

 88年に両国でナゴルノカラバフ紛争が勃発して以降、断続的な緊張のたびにアルメニアはナヒチェバンへの鉄道・道路交通網を断ち切った。対するアゼルバイジャンは、国内に残るアルメニアのキリスト教遺跡を多数破壊し、非難されている。最果ての地の孤立は続き、人々は孤独から逃れられずにいる。

<次ページで写真12点を紹介>

Photographs by Mario Heller-Panos

 【連載20周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
    2024年10月8日号 掲載

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領の父で「建国の父」ヘイダルの肖像。ヘイダルの政治キャリアは故郷ナヒチェバンから始まった

野火で焼けた草木。アルメニアとアゼルバイジャンの緊張は数十年にわたり続いている

ナゴルノカラバフ紛争で命を落とした兵士の肖像写真がモスク(イスラム礼拝所)の前に掲げられている

バイオリンを抱えた20歳のファクレディンは、音楽の道に進みたかったが家族から猛反対されたという。家族からは長めの髪を切れと毎日のように言われるとこぼす

ラマダン(断食月)中に行われた埋葬式で祈るイスラム教徒

村を歩く子供たち。ナヒチェバンで生まれ育った若者は、自分たちと違う言語を話す人々が世界にいることが信じられないと語る

トルコとの国境は開かれているため、住人の多くは果物や野菜を買いにトルコ側に渡る。ほとんど助成もないナヒチェバンの農業は衰退しつつある

ゾレはナヒチェバンで自転車に乗るのは自分だけで、人々から「なぜ子供の乗り物に乗る? やめたほうがいい」と言われるという。この地で多様な価値観は認められにくい

ミネラルウオーター工場の生産ラインで働く労働者。水はナヒチェバンの最重要の輸出品だ

ロシア車ラーダを洗う男性。維持費や修理費が格安で済むラーダはナヒチェバンで一番人気の車種

アルメニアの首都エレバンに続くはずの鉄道線路

「この地の人々が自らの心の孤独から脱しない限り、いくら国境が開かれても意味はない」と語るラファエル

撮影:マリオ・ヘラー ドイツ・ベルリンを拠点とするスイス人写真家。2015年にパティシエからプロの写真家へと転身した。主に欧州、中央アジアの社会構造と文化的背景の関係性をテーマに独自の写真作品を制作する一方、新聞・雑誌の編集部でフォトエディターとして勤務する



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