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【読解力を高める】オーディオブックの意外な効用...出版翻訳家が「聴く読書」を勧める理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月5日 16時50分

音声で聴くと誤訳がわかる/VinzentWeinbeer-pixabay

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<文章を正しく解み解こうとするとき、「読む」だけではなく「聴く」ことで見えてくることとは?>

日本でもビジネスパーソンを中心にオーディオブックが普及し、「聴く読書」の人気が高まっている。本を聴くことと、読むことには違う魅力があるものだが、翻訳者の村井理子氏にとって、いまやオーディオブックは仕事に欠かせないツールになっているという。

語学のプロはオーディオブックをどう活用しているのか? 意外と知られていない出版翻訳家の仕事の舞台裏がわかる『エヴリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』(CCCメディアハウス)より、取り上げる。

◇ ◇ ◇

オーディオブックで訳文をチェックする

訳すときはずっと、キンドルの原書と訳文ファイルを隣り合わせに立ち上げて作業をしています。

推敲が終わったあとは、Audible を使ってチェックをします。目よりも耳から情報を得るほうが得意だと気がついたからです。音声でチェックしたほうがずっと速いのです。

私は自分の目をあまり信じていません。目には勝手に入ってくる情報が多いので、見落としやすいと感じています。私は注意力も散漫なので、かなり苦手な作業です。これは、個人の特性のようなものである気がしています。耳より目が強い人もいるでしょう。

原書と突き合わせて訳しているつもりでも、どうしたって訳し漏れは発生するものです。単語を落としたり、1行落としたりといったことも、1冊の本を訳す過程では必ず起きます。

訳し漏れを拾うときに、目で原書と訳文を交互に追うより、耳で原文を聴き、訳文を目でなぞるほうが気づきやすいのです。Audible で音声を流しながら、同時に目で日本語訳を追うという作業になります。

目から入ってくる日本語の文字情報と、それと同時に耳から入る英語の音声情報が、脳のなかでぶつかって、弾けていく感覚があります。目と耳、2つの入り口から入ってきたものが、ひとつに重なる瞬間です。

すると、「ここを落としていた」とすぐわかります。漏れに気づいたらそこではじめて原文を確認し、「ここが落ちてる」と、再確認して修正するのです。

音声は文字より情報量が多い

アメリカはAudible の市場が大きく、私が訳す本のほとんどはAudible 版も出ています。アメリカのAudible は著者本人が読むこともよくあります。自伝が出ているパリス・ヒルトンも、ミシェル・オバマも自分で読んでいます。

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