韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料を1ウォンも払わず 「連絡先分からず」と苦しい言い訳
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月18日 17時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<世界的な注目をきっかけに政府は韓国文学の普及を目指そうとしているが......>
ノーベル文学賞をアジアの女性として初めて受賞した韓国の作家ハン・ガン(韓江)。韓国では政府も挙げて受賞を祝い、これを機にK-POP同様に韓国文学をK-BOOKとして世界に発信していこうと盛り上がっている。そんなおり、ハン・ガンの作品が教科書などの教育分野で34件も掲載されているのに、著作権料が1ウォンも支払われていないことが明らかになった。韓国メディア韓国日報、イーデイリー、トップスターニュースなどが報じた。
「作家の連絡先が分からない」
この問題は、韓国の野党・祖国革新党のキム·ジェウォン議員が指摘して明るみに出た。それによると、教育目的で使われた著作権に対する補償金支給を担当する韓国文学芸術著作権協会(文著協)が提出した資料には、ハン・ガンの作品使用事例として少なくとも34件(教科書11件、授業目的4件、授業支援目的19件)を指摘している。
これだけの作品が使用されながら、著作権料がまったく支払われていなかった理由として文著協は「補償金分配のためには権利者の個人情報と受領同意が必要で、2017年から出版社を通じて補償金受領について案内してきた」としながら「ハン・ガン氏の連絡先が分からなかった」と釈明した。また補償金がいくらになるのかについては「個人情報なので具体的な金額を公開できない」と述べるに留まった。
5年以上受け取らなければ協会が使用可能
当然ながらこの著作権料の未払いで被害を被ったのは、ハン・ガンだけではなかった。 最近10年間(2014〜23年)支給されなかった補償金は合計104億8,700万ウォン(約11億5000万円)に達すると見積もられている。実に毎年約10億ウォン(約1億1000万円)の補償金が著作者に支払われないまま協会に積み立てられているという。
原因としては不合理な補償手続きが大きいという。韓国の著作権法では、教科書に掲載される著作物の場合、文化体育観光部(日本の文科省に相当)が指定した補償金受領団体(今回問題となった文著協)を通じて、出版後に著作権者に補償することになっている。出版社から著作権料を先に徴収し、それを後から著作権者に分配する仕組みだ。
このシステムでは補償金を受け取るためには作家自らが直接申請しなければ保証金を受け取れない可能性が高い。とはいえ、自分の作品が使われたかどうかを把握するのは難しく、大部分が受領できないため不合理なシステムだという指摘が出ている。
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