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米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は?

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 11時0分

では、なぜ有権者の反応が揺れ動くのかというと、そこには3つの問題があるようです。

1つは「トランプ氏への抵抗感が薄れている」という問題です。あるレベルを超えた教育水準の人々、ある年齢以下の若年層にはトランプ氏への抵抗感があったのは事実ですが、その抵抗感が薄くなっているというのです。

その理由としては、GAFAMなど大手ハイテク企業までが大規模なリストラを実施する一方で、新卒採用はかなり減らしています。そうした状況下で、雇用問題に苦しみ、高止まりした物価に苦しむ不満を抱く層が、現状を「壊してくれる」トランプ氏との距離感を縮めているという問題があります。

これまでは、トランプ氏には「性差別や人種差別、あるいは人権の否定や暴力肯定」などの傾向を感じるために抵抗があったのに、その抵抗感を現状不満が上回っているというわけです。この動きがあるレベルを超えたことで、「みんなで支持すれば怖くない」的な心理も生まれています。若者向けには、イーロン・マスク氏の陣営への参加も、当初は困惑があったものの、一部には好感されているようです。

2つ目は、ハリス候補の「保守シフト」の副作用です。ハリス氏の陣営は、元来の民主党支持者だけでなく、決戦州の保守票も取り込むことで勝敗ラインを突破したいという戦術で攻めています。そのために多くのテレビインタビューなどを受けつつ、主張を少し右にシフトしているわけです。ですが、現時点では、世論の中で聞こえてくる声としては、この右シフトへの批判のほうが大きくなっています。

ハリス「保守シフト」への反発

例えば、8月の時点では「イスラエルは支持するが、ガザの人道危機は見過ごさない」として党内の結束に成功しました。ですが、現在のハリス氏は「イランの挑発には厳しく対処」するとして「ヒズボラ、ハマスのリーダー暗殺に成功したのは勝利」という言い方をしています。中道から右の票を狙っての発言ですが、こうしたタカ派的発言に反発した若者に加えて、特に決戦州の1つであるミシガンの中東系支持者の離反が懸念されるようになっています。

経済に関しては、AIや量子コンピュータなどの最新技術で中国に先行するという主張に続いて、ハリス氏は、財政政策を進めるためにJPモルガン・チェイスのジェイミー・デイモンCEOを政権に加えるという噂があります。中道実務政権とするという点では、良い動きかもしれませんが、これも左派や若者にはウォール街との癒着として嫌われているようです。

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