長生きと断食の微妙な関係
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 10時44分
パンドラ・デワン(科学担当)
<カロリー制限につながり有益な健康効果もあるが>
適度なカロリー制限に寿命を延ばす効果があることは、さまざまな動物実験で古くから知られている。でも日々の食事量をずっと減らすのは、ちょっとつらい。だったら、代わりに週に1日くらい断食してみるのはどうだろう?
そこで、米ヘルスケア関連企業のカリコ・ライフサイエンシズとジャクソン・ラボラトリー、ペンシルベニア大学の研究者らは約1000匹のマウスを用いて、カロリー制限や断続的断食がもたらす健康長寿効果を比較し、その結果を英科学誌ネイチャーに発表した。
研究を主導したアンドレア・ディフランチェスコとゲーリー・チャーチルによれば、目指したのは「(同系交配の実験用マウスではなく、より自然な)遺伝的に多様なマウスを用いて老化の基本的な仕組みを検証し、寿命延長を意図した人為的介入に対する反応を評価」することだ。
マウスには5種類の食事法のうち、1つを無作為に割り当てた。①無制限に食料にアクセスできる、②1週間のうち1日は断食、③同じく2日連続で断食、④摂取カロリーを標準より20%減らす、⑤同40%減らす、の5つだ。
結果、どの食事法にも一定の寿命延長効果が見られたが、その強弱にはかなりの差があった。体温低下や食物の探索行動(空腹を意味する)、血流や免疫システムの変化など、有害な兆候が認められることもあったという。
しかも、どのマウスにも同じような寿命延長効果が認められたわけではない。一般論として長生きに食事制限がいいのは事実だろうが、統計的に見ると食習慣よりも遺伝的要素のほうが寿命に深く関わっているらしい。
結論。週に1回前後の断食や20%程度のカロリー制限で寿命が延びる可能性は確かにある。それは動物実験で確かめられたが、人間にも当てはまる保証はない。ちなみに今は、老後の日々をだらだらと延ばすよりも、極上ディナーを楽しみたいと思う人のほうが多いようだ。
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