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輸入関税を万能薬のように触れ回るトランプに大いなる懸念

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 17時0分

大統領一期目から関税発動が大好きだったトランプが戻ってくる?(10月19日、ペンシルバニア州ラトローブ)  REUTERS/Brian Snyder

ソナム・シェト
<関税引き上げを経済政策の目玉にするトランプは、大統領に再選されたら輸入品すべてに高水準の関税をかけると言う>

ドナルド・トランプ前大統領は口を開けば「関税」と言わずにいられない大統領候補(共和党)だ。

先週、ミシガン州オーバーン・ヒルズで開かれた有権者との懇談会では、「関税」は「辞書に載っている言葉の中で最も美しい言葉だ」とまで言った。



酔っているようでさえある。「『愛』も、すごくいい言葉だ」とトランプが言うと、聴衆は笑った。「だが私は、『関税』のほうが美しいと思う」

大統領一期目から「関税マン」を自称していたトランプは、再選された場合、輸入品すべてに高率の関税を課すという計画を繰り返し宣伝している。

当初はアメリカの貿易相手国すべてに10%の関税をかけると言っていたが、最近になって50%まで引き上げる可能性を示した。また中国からの輸入品には60%の関税をかけると言う。

「私がこの国の大統領になるなら、100%、200%、2000%の関税をかけるつもりだ」と、シカゴ経済クラブでの講演では言った。そして「メキシコの車はアメリカで1台も売れなくなるだろう」と、付け加えた。

9月にはミシガン州フリントの集会で、「関税は、これまでで最も偉大な発明だ」とも語っている。

経済アナリストや専門家は、そうは考えていない。

ワシントンポストは、トランプの関税引き上げ案が実施された場合、アメリカ経済はいかに悲惨なことになるか、そしてその代償を払うアメリカの消費者であることを詳細に述べた長文の記事を掲載した。



また、株式市場の不確実性を高め、アメリカと他の国々との対立を引き起こす可能性もある。

「議論になっているこの計画には、歴史な意味がある」と、ダートマス大学の経済学者ダグラス・A・アーウィンは、ワシントンポストに語った。「影響は甚大で、その反動はさらに大きなものになるだろう」

ジャネット・イエレン財務長官も、「無差別に関税」を課すことは、アメリカの企業に悪影響を及ぼし、インフレを加速させる「非常に誤った」行動であると警告した。

「アメリカの行動だけで、わが国の経済・安全保障を増進させることはできない」と、イエレンはニューヨークの外交問題評議会の講演で述べた。

民主党の大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領もトランプの関税案を「トランプ消費税」と呼んで非難している。

だがハリスは、本選挙での勝利に欠かせない激戦州の有権者を遠ざけないため、この問題で微妙なバランスをとる必要がある。9月に発表されたブルームバーグ/モーニング・コンサルタントの世論調査によると、激戦州の有権者の過半数が、輸入品すべてに10%の関税をかけることを「強く」あるいは「ある程度」支持している。

トランプとハリスは先週の同じ日に激戦州のミシガン州に入った。ハリスは午後に集会を開き、その後自動車労組の労働者を前に演説し、夕方にデトロイトで2回目の集会を行った。トランプも、デトロイトで自身の集会を開いた。



【動画】「関税」愛を告白するトランプ
Trump: It's the most beautiful word in the dictionary. You have a lot of words that are damn nice like love. But I think it's more beautiful than love. The word tariff. pic.twitter.com/zYe29hxPqB— Acyn (@Acyn) October 18, 2024





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