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北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は? 

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月30日 15時45分

平壌を訪れ、金正恩(右)の歓迎を受けるプーチン(今年6月) VLADIMIR SMIRNOVーSPUTNIKーPOOLーREUTERS

サム・ポトリッキオ
<ロシアへの北朝鮮派兵で得するのは二国のどっち? このタッグで両国が得るメリットと、世界がこうむる恐ろしいデメリット>

ロシアのプーチン大統領のウクライナ戦争計画は、消耗戦に対する欧米諸国の「支援疲れ」が限界に達するという予測に賭けているように見える。最も直接的な言い方をすれば、ウクライナがロシアの侵攻を打ち破るためにはプーチン政権を打倒するしかない。

ただし、プーチンは政治的生き残り術の達人だ。戦争の遂行コストと政権のもろさを指摘する主張の両方を抑え込めれば、ウクライナに対する人的優位を生かし続けることで最終的に戦争目的の大半を手にできる可能性が高いことを知っている。

その意味で北朝鮮の兵士がロシアのクルスク州で目撃されたことに驚きはない。プーチンが今年6月、北朝鮮を訪問していることを考えればなおさらだ。

北朝鮮軍兵士の最初の一団は3000人と比較的少数だが、おかげでロシアはさらなる進軍が可能になる。ロシア兵の人的損失の影響を緩和するために必要な大規模派兵のきっかけにもなるだろう。

この派兵の心理的効果も大きい。今後もずっと戦い続けるロシアの意思と能力がますます明らかになるし、自国兵士の損失を抑えることもできるからだ。

ロシア在住のかつての教え子や友人との会話から判断すると、ロシア国民の多数はウクライナに負けることを望まないが、同時にこれ以上の戦争継続も望んでいないようだ。プーチンの鋭い生存本能は民意に敏感で、それがいかにもろいかもよく知っている。北朝鮮軍兵士の派兵は、ロシア国民にさらなる戦争への貢献を求めるプーチンの能力低下の反映とも考えられる。

ただし、両国の絆は見かけほど強くない。真に強固な同盟関係というより、反米・反西側の姿勢と国内支配維持の目的のほうが動機としては大きいようだ。実際、この同盟は強さより弱さの表れと見なせるかもしれない。ロシアは兵員と軍需物資の不足に悩み、北朝鮮は食糧危機に直面している。

両国首脳の動機は、自国内の状況にある。ロシアにとっては戦費増大の緩和策、北朝鮮にとっては国内の悲惨な経済状況にもかかわらず国防支出を増やすことを正当化する手段だ。加えてロシアのエリートや一般国民には、自国が中国の属国や従属的パートナーになりつつあるという見方への怒りもあるようだ。

ウクライナがロシアの通信を傍受した記録によると、北朝鮮軍の存在は既にロシア内部で不協和音を引き起こしている。北朝鮮軍30人当たり通訳1人と3人の上級将校が付くという話を聞いて、あるロシア兵はこう言ったという。「そんな人手をどこから連れてくるのか? 無理やり引っ張ってくるしかないだろう」

本物の消耗戦において士気は必要不可欠な要素だ。北朝鮮軍との協力に対するロシア側の嫌悪感を示す、こうした初期の兆候は潜在的な不安要因と言える。

しかし、世界の安全保障にとってより懸念すべきなのは、北朝鮮軍のスキル向上と実戦経験だ。北朝鮮が何の見返りもなしにロシアに協力しているはずがない。ロシアは間違いなく北朝鮮軍の能力を高め、アジア太平洋地域の不安定化を招くはずだ。

北朝鮮は欧米製の兵器や戦術を実地体験することで、朝鮮半島やその他の場所で攻勢に出る際の貴重な判断材料を手に入れることができる。アメリカと韓国は今後、北朝鮮に対するいかなる行動も中国だけでなく、ロシアも引き込むという現実に立ち向かわなくてはならない。

この新たな状況は、合理的な選択に基づく行動が北朝鮮をより好戦的な方向に走らせる可能性を示唆している。北朝鮮軍の参戦は、世界的な紛争拡大を招く最大の危険要因になりかねない。

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