日本の安倍政権と同様に、トランプを支えるのは生活に余裕がある「保守浮動票」
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月30日 10時30分
安倍政権を支持した有権者層とトランプ支持層の類似点
そんな彼らは、何かにつけて正論を吐いて論破をしたがる石破氏を好まない一方で、カネの問題を起こした安倍派議員には意外と冷淡であり、日本保守党を勝たせるほど熱狂的ではないという中で、棄権したのでしょう。
日米では政治風土も経済の構造も大きな違いがあります。ですが、この保守浮動票の存在という点では、安倍氏の作り上げた日本の票と、ドナルド・トランプ氏の積み上げてきたアメリカの票にはかなりの類似が見られます。
トランプ氏の政策ですが、その多くはアメリカの直接の国益を損なうものが多いわけです。輸入品に多額の関税をかければ、物価は上昇して消費者は困り、小売店は苦しみます。移民を追放すれば、外食・サービスなどの労働力が一気に不足します。製造業を取り戻すといっても、そもそもクリーンルームでスマホを組み立てるロボットの管理をアメリカ人にさせたら、人件費でコスト構造が変わってしまいます。要するに全てがファンタジーであり、同時に、こうしたアンチ経済的な政策を歓迎しているのは、仮に実現しても「痛み」を感じない財力のある人々です。
どうして左派を叩くのが面白いのか、民主党の政治家を収監せよなどと暴言を吐くのが面白いのかというと、余裕があるからです。自分が生活苦や雇用危機に直面していたら、そんな「憎悪というエンタメ」に身を委ねている余裕はないはずです。
10月27日の日曜日にはドナルド・トランプ氏はニューヨークの「MSG(マジソン・スクエア・ガーデン)」で大きな政治集会を開催して話題になりました。前座に出てきたコメディアンや評論家が「プエルトリコをゴミの浮島」と言ったとか、黒人男性を差別する言葉を連発したと話題になっています
その参加者の多くはニューヨーク市民でもないし、その近郊住民でもないと思います。市内にはトランプ派は少ないし、州北部などの住民にはマンハッタンで遊ぶような経済的余裕はありません。ですから、主な参加者は中西部や南部の富裕層だと思います。彼らはニューヨーク観光のついでにMSGでの集会に来ているのです。
2016年の選挙、2020年の選挙では、退潮が著しかった共和党の基礎票に大幅な上乗せをして、トランプ氏は7000万票前後という空前の集票を行いました。この票は、共和党の議員たちの当選にも作用しており、結果的に共和党はトランプ氏に乗っ取られた格好となりました。
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