北朝鮮からの「援軍」で、ウクライナの戦況はひっくり返るのか...金正恩の思惑と、戦争への影響とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月31日 17時1分
北朝鮮の援軍は戦況を変えるほどの働きができるのか
カギは彼らが投入される場所にある。ロシアは北朝鮮の援軍を、ロシア西部クルスク州に派遣するとみられている。ウクライナが初めてロシアに越境攻撃を仕掛けてきた地域で、北朝鮮部隊は、早ければ11月中にも最前線に送り込まれる可能性があるという。
これは2つの点で重要だ。まず、6月にロシアと北朝鮮が締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」の内容に沿っている。この条約では、いずれかの国が領土に攻撃を受けた場合、相手方はその防衛を助けることが定められているのだ(つまりロシアは、ウクライナ領内での戦いには、北朝鮮軍を投入できない)。
第2に、北朝鮮の応援でクルスクの戦況がロシア有利に傾けば、ロシアは一部部隊をロシア側が22年9月に一方的に併合を宣言したウクライナのドネツク州など南方に動かして、ウクライナの防衛を崩すことができる(現時点であと一歩とされている)。そうなれば、ザポリッジャとドニプロ(ドニエプル)を奪還する戦いにも弾みがつくだろう。
現在、クルスクでは、ウクライナの優位が伝えられているが、「戦意の高い1万人の兵士の応援があれば、戦況をひっくり返せるかもしれない」と、米外交政策研究所のロブ・リー上級研究員は語る。
北朝鮮軍に対応するために、ウクライナがクルスクに投入する兵力を増やせば、南方は手薄になるから、ロシアにしてみれば軍を増強したのと同じ効果が得られる。
ウクライナは北朝鮮の援軍に苦い顔をしているのか
もちろんだ。北朝鮮は軍需品に加えて、今度は人員まで送り込むわけだから、宣戦布告こそしていないが、事実上の参戦に近い。ウクライナ戦争をアジア(と世界)に広げるような行為を、欧米諸国は許すべきではないと、ゼレンスキーは訴えている。
ウクライナにとって良いニュースは10月22日、EUの欧州議会が、ロシアの凍結資産を活用して、最大350億ユーロ(約5兆7000億円)の融資を決めたことだろう。
ただ、対ウクライナ支援の拡大、ウクライナに供給した武器の用途制限緩和、そしてNATO加盟に向けた具体的な道筋を含むゼレンスキーの勝利計画は、欧米諸国で鈍い反応を得たにすぎなかった。
それだけに、北朝鮮の援軍のために戦況が変わることなど、ウクライナはなんとしてでも避けたいところだ。
北朝鮮のメリットは?
これまでにも北朝鮮は、ロシアに砲弾を供与して食糧援助などの見返りを得てきた。さらに将兵を派遣すれば、大量の死傷者が出るリスクと引き換えに、ロシアからもっと援助を引き出すとともに、世界の舞台で新たな地位を確立できる。軍に貴重な実戦経験を積ませることもできる。
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