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NASA観測が捉えた「アトラス彗星の最期...」肉眼観測は幻に

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月2日 8時0分

ハロウィンを彩るはずが...アトラス彗星が太陽で消滅(写真はイメージです) Shlomo Shalev-Unsplash

ジェス・トムソン
<太陽接近により期待されたアトラス彗星の輝きは、目前で消滅という運命に終わった>

数日中に肉眼でも見えるかもしれないと期待された彗星が、太陽にのまれて消滅した。

【動画】NASA観測が捉えた「アトラス彗星の最期...」肉眼観測は幻に

アトラス彗星(C/2024 S1)は10月24日に地球に最接近し、太陽付近を通過した後、夜空を彩るはずだった。

しかし10月28日、太陽に最も近づく近日点に達したところで崩壊し、太陽の表面から約120万キロの地点で溶けてなくなってしまったらしい。

The solar system has one less comet. Comet ATLAS (C/2024 S1) melted away today when it passed within 0.008 AU of the sun.Comet ATLAS initially showed promise in September by brightening significantly, suggesting it might survive its close approach to the Sun and put on a... pic.twitter.com/rjJrAMuL3g— Erika  (@ExploreCosmos_) October 28, 2024

アトラス彗星は太陽に接近した数日後、肉眼でも見えるようになり、ハロウィンの10月31日までには金星よりも明るくなる可能性があると期待されていた。

米航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星は、この彗星が太陽の強烈な光を浴びて溶けていく最後の姿を太陽コロナ観測装置でとらえた。同彗星は9月27日に発見されたばかり。太陽系の旅ははかないながらも印象を残した。

アトラスC/2024 S1は、太陽の至近距離を通過するクロイツ群と呼ばれる彗星だった。クロイツ群は19世紀に初めてこの彗星を研究したドイツの天文学者ハインリヒ・クロイツにちなむ命名で、数百年前に分裂した大きな彗星の破片と考えられている。

「クロイツ群は太陽のすぐ近くを通過したり太陽に突っ込んだりする小さな彗星核で、天文学者の間では一般的に、一つの共通する始祖から放出された破片と考えられている。始祖からの放出速度が比較的小さかったことから、同じような楕円軌道を描いている」。スロバキア科学アカデミーの天文学者ルーボス・ネスルサンは本誌にそう語った。

崩壊と蒸発の運命を辿るクロイツ群

クロイツ群の軌道は太陽に近いために危険が大きく、太陽に接近するととてつもない重力と高温のために、崩壊して完全に蒸発してしまうことが多い。

大型のクロイツ群彗星は、地球から肉眼で見えるほど明るいこともある。例えばグレート・コメットとして知られる1965年の池谷・関彗星の明るさは、満月の-13等級に近い-10等級だった。

クロイツ彗星の中でひときわ大きいと思われていたアトラスC/2024 S1彗星が、もし太陽接近を生き延びれば夜空で鮮やかに輝くと期待されたのはそのためだった。

しかしこの彗星は、太陽に接近する数日前から分解が予想されていた。光度が大きく変動する様子は、核が崩壊している兆候だった。

(翻訳:鈴木聖子)

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