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実行犯が手口を暴露...東南アジアが拠点、アメリカで4万人が騙された「豚の屠殺」詐欺とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月5日 15時8分

SNSの運営会社が、犯罪組織の使う出会い系サイトから広告収入を得ている可能性もある。ピタニラブートは本誌に、そうした運営会社や送金に関与した銀行も「捜査の対象になり得る」と述べた。

またタイ当局はカンボジアにいる犯罪組織のメンバーに対して165通の逮捕状を出しており、現地の警察および裁判所に捜査協力を要請している。

冒頭で証言したナリンは、タイに戻ってから人身売買の「被害者」としての認定を受けようと試みたが、うまくいかなかった。「詐欺師たちは法律の抜け穴に精通しており、人身売買被害者救済法を利用して罪を逃れようとすることがある」と、タイ移民局の担当者は本誌に語った。

「真の被害者を保護し、法律の悪用を狙う者をふるいにかけるためにも、被害者認定は慎重に行っている」

各種のSNSに偽のプロフィールを書き込んで被害者をだますのは詐欺師の常套手段だ。しかしピタニラブートに言わせると、いくら警告してもSNS運営会社はまともに対応していない。

ILLUSTRATION BY MOOR STUDIO/ISTOCK

この点について問い合わせたところ、フェイスブックの親会社メタは本誌に、詐欺行為の摘発についてはタイ警察と緊密に協力していると回答してきた。

今年4月から7月までに偽のアカウント12億件とスパムメッセージ3億2200万件を削除しているし、タイ国内のデジタル・リテラシー推進団体とも協力してサイバー詐欺被害を回避するための支援を提供しているという。なおグーグルからの回答は得られなかった。

いずれにせよ、こうした犯罪グループが「世界中で増殖するのは必至」だとピタニラブートは言う。なにしろ「すごい金額を稼げる」からだ。「実際、既にサイバー詐欺の稼ぎは麻薬の密売で得られる利益を上回っているかもしれない」

タイ警察の当局者によれば、この5年間でサイバー詐欺に関するアメリカの司法当局からの捜査協力要請は飛躍的に増えた。

アメリカ人被害者の預金が国内外の銀行口座からタイに送金されたロマンス詐欺の事例や、ランサムウエアにやられたアメリカ人の払った身代金がタイの仮想通貨取引所を経由して処理された事例も確認されている。

「豚の屠殺」の被害総額

「豚の屠殺」と呼ばれる詐欺の手口もある。豚を思い切り肥育してから屠殺するのと同様、うまい投資話を装って被害者に限界まで金を出させ、挙げ句に行方をくらます手法だ。

タイの捜査当局が踏み込んだサイバー詐欺の拠点 ROYAL THAI POLICE

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