なぜプーチンは長期政権を維持できるのか...意外にも、ロシア国内で人気が落ちない「3つの理由」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 13時57分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<西欧諸国や日本では「独裁者」のイメージが強いプーチンも、ロシア国内では意外に支持を集めている。背景にはロシアの歴史や民族性から成る「ある国民気質」が──>
プーチンが国民からの反発を受けつつも長期政権を維持できるのはなぜなのか。
外務省時代から今まで世界97カ国でさまざまな国の人とビジネスや交流を行ってきた山中俊之氏はその背景として「ロシアの人々が『強権的なリーダーを求める3つの理由』がある」という。
山中氏が「政党」を切り口に世界情勢を解説する『教養としての世界の政党』 (かんき出版)より、一部を抜粋・再編集して紹介する(本記事は第1回)。
◇ ◇ ◇
プーチン大統領はなぜ支持されるのか?
プーチン大統領は、なぜ、これほどまでの長期政権を維持できるのでしょうか?
過去を見てみれば、旧ソ連のゴルバチョフ書記長は、「ペレストロイカの立役者」として日本や西側諸国では評価されていますが、ロシアにおいては「ソ連を崩壊させたとんでもないやつ」という、売国奴に近い存在とみなす人もいます。
拘束こそされなかったものの、職を解かれたあとは民族主義者のエリツィン大統領に追い出され、与えられたのは簡素な住まい。要職にあった人物とは思えない粗末な扱いです。
エリツィン政権のおよそ10年間は、国家体制の激変後とあって国内は大混乱。私も当時のモスクワに行きましたが、治安が悪くて街中が暗く、人々はピリピリしていました。ホテルにいても安心できず、地下鉄に乗っていても雰囲気が殺伐としていたのを今もよく覚えています。
エリツィンが追われるように政権を去り、2000年代にプーチン大統領が誕生すると、資源重視の経済政策をとり、石油や天然ガス、ダイヤモンドといった資源の価格高騰で経済が良くなりました。
ロシアによるウクライナ侵攻の中、寒さの厳しいEU諸国が冬の到来に怯えていたのは、ロシア産エネルギーに頼っていたからです。
「エリツィンの混乱時代より暮らしは良くなった」
「プーチン、よくやってくれたな!」
暮らしが潤えば素朴に感謝する市民はいたでしょうし、今もいるでしょう。彼らがプーチン大統領を支持していても何ら不思議はありません。その後のロシアは経済発展していきますから、なおさら人気につながったと言えます。
ロシアは、後述するように、ロマノフ王朝からソ連、さらにソ連崩壊後まで歴史的に強権的な政治が続いてきました。プーチン氏の強権政治もこの系譜に属するものです。
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