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メキシコとの国境地帯の砂漠で「20年間で4000人以上の移民が死亡」実際の死者は3〜8倍との指摘も

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月6日 19時2分

自身も行方不明者の捜索に携わるカリフォルニア大学デービス校のブラッド・ジョーンズ教授(政治学)は、今の状況を「非人道的」と呼ぶ。

「この20年間で4000人以上の移民がアリゾナ州とメキシコの国境地帯で死亡したことが分かっている」と、ジョーンズは言う。

「だが4000というのは発見された遺体の数にすぎない。発見された遺体1体につき、未発見の遺体が3〜8体あると推定されている」

ジョーンズによれば、身分証明書を携帯していたか、以前に越境を試みてアメリカで指紋を採られていたために身元が判明するケースもある。だが遺族の多くは、愛する家族の消息をつかめないままだ。

「残念ながら制度上の問題で、昔から死者の数は実際よりも少なく見積もられ、報告漏れも多い。またバタリオンのようなボランティア団体が遺体の発見を報告しようとしても、地元当局が妨害するので問題はさらに深刻化する」

米議会の独立監査機関である政府監査院(GAO)は2022年、移民の失踪と死亡に関する税関・国境取締局(CBP)の報告業務を調査し始めた。

問題の一部は、移民たちが正式な国境検問所ではない地点で国境を越えようとすることにある。そこは砂漠のど真ん中で、日陰がほとんどない過酷な環境であることも多い。

「人里離れた場所で命を落とした移民は、統計に反映されないこともある」と、GAOのレベッカ・ギャンブラー国土安全保障・司法担当部長は語る。「そもそも発見された遺体が、移民のものかどうか判断できない場合もある。そうなると、その死が国境警備隊のデータベースに登録されない可能性はますます高まる」

CBPは17年に「消息不明の移民プログラム」をスタートさせた。荒野や砂漠で移民が通りそうな場所に看板や無線塔を設置して、命の危険にさらされている人たちが助けを求められるようにする試みだ。

こうした措置によって移民の正確な位置を把握することが、救援活動では決定的に重要になるとギャンブラーは語る。「(移民の死に関する)データが限定的であることを認識する必要がある。議会や政策立案者、そして市民が、国境警備隊の発表する統計について(実際はもっとひどいという)状況を知るべきだ」

19年10月〜昨年4月に、行方不明になったと米厚生省に通報があった移民の子供3340人のうち、実際に発見された数は1%にも満たない。

国境警備隊がボランティア団体の活動を歓迎し、きちんと記録を取っている地域もあるが、それは例外的だとジョーンズは言う。「この25年間、(多くの移民が命を落とす)危機はずっと続いてきた。移民が1人保護される裏では、多数の移民が命を落としている」

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