1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

「エゴは外に置いてきて」 クインシー・ジョーンズ、個性派スターをまとめあげた『We Are The World』の奇跡

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月6日 17時32分

クインシー・ジョーンズ(2018年11月) Mario Anzuoni-Reuters

木村正人
<飢餓救済チャリティーソング『ウィ・アー・ザ・ワールド』で、個性とアクの強いトップアーティストたちを見事にまとめ上げた唯一無二の才能>

[ロンドン発]世界で最も売れたアルバム、マイケル・ジャクソン(故人)の 「スリラー 」をプロデュースした20世紀で最も影響力のある米音楽界の巨人クインシー・ジョーンズが11月3日、カリフォルニアの自宅で安らかに息を引き取った。91歳だった。

クインシー・ジョーンズは『質屋』(1964年)、『冷血』(67年)、『カラーパープル』(85年)など映画音楽の作曲家、レコード・プロデューサーとして成功を収め、グラミー賞に80回ノミネートされ、28回も受賞した。

その成功ですら彼の才能に比べるとささやかなものに過ぎない。

筆者が大学生だった81年、クインシー・ジョーンズがカバーしたディスコ音楽『愛のコリーダ』が大ヒットした。

85年にはライオネル・リッチー、マイケル・ジャクソンら米国のトップミュージシャン45人以上が参加した飢餓救済チャリティーソング『ウィ・アー・ザ・ワールド』をプロデュースする。

「何のしがらみもないあなたが選ぶしかない」

今から40年前の84年、エチオピア飢饉で推定60万~100万人以上が亡くなった。国際赤十字のエイドワーカーとして働いていた英国人女性クレア・バートシンガーさんは「1000人の飢えた子どもを目の前に食料を与えられる60~70人を選ぶのが私の仕事だった」と振り返る。

クレア・バートシンガーさん(左、筆者撮影)

現地スタッフは「飢えているのは私たちの家族であり、いとこであり、友人だ。何のしがらみもないあなたに選んでもらうしかない」とクレアさんに助ける命を選択する過酷な仕事を委ねた。失われる930人超の命より、救える60人余の命だけを見つめ、神の許しを乞う毎日だった。

現地の惨状を伝える英BBC放送を視たアイルランド出身のロック歌手ボブ・ゲルドフは「おれたちにできることは何か」という衝動に突き動かされる。バンド・エイドを結成し、クリスマス前にチャリティーソング『ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス』をリリースする。

「黒人を救う黒人はいない。それについてどう思う」

この動きが『ウィ・アー・ザ・ワールド』につながっていく。『バナナ・ボート』の大ヒットで知られ、国連児童基金(UNICHF)と協力してアフリカ支援を展開していたハリー・ベラフォンテ(故人)はプロデューサーのケン・クレーゲン(同)を通じてライオネル・リッチーに連絡を取る。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください