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米大統領選挙の「選挙人制度」は世界の笑い者── どうして始まりなぜ変えられないのか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月6日 16時36分

一票一票が等しく重要視される直接選挙なら、フランスの大統領候補がパリ、リヨン、マルセイユで選挙活動を行うように、アメリカの大統領候補も大都市に顔を出すだろう。

この非常に愚かしい制度を変える方法は、ほとんどない。というのも、この制度は合衆国憲法で定められており、修正するには各州の議会で4分の3以上の賛成が必要になる。大統領選挙の勝敗を左右する激戦州の多くが、自分たちの特権を終わらせることに同意するはずがない。

考えられる打開策がひとつ。それは、全国一般投票州際協定(NPVIC)だ。不思議なことにあまり報道されていないこの構想は、憲法を改正することなく現実的な解決策を提供する。

NPVICとは、州の得票に関係なく、全国民の投票で勝利した候補者に選挙人票を与えるという州間の協定だ。この協定は、参加する州の選挙人の数が、大統領選挙の当選に必要な票数270に達した場合にのみ、発効する。

2024年現在、NPVICは16の州と首都ワシントンで制定されており、選挙人の数は合わせて209に達している。カリフォルニア州やニューヨーク州のような大規模な民主党支持者の多い州だけでなく、バーモント州やデラウェア州のような小さな州でも支持を集めている。

この協定を有効にするには、さらに61の選挙人票が必要だ。今後、加入する可能性があるのは、ミネソタ州(選挙人10票)、ネバダ州(選挙人6票)、メイン州(選挙人4票)、ミシガン州(選挙人15票)などだ。

だが、この議論においてきわめて重要なペンシルベニア州(選挙人19票)において、NPVIC法案を成立させようとする動きは、世論の一定の支持にもかかわらず、州議会で何度も行き詰っている。

ペンシルベニア州が協定への参加を躊躇するのは、より大きな全米的傾向を反映している。現在、大統領選挙で不釣り合いな影響力を享受している激戦州が、この協定に抵抗しているのだ。

だが、NPVICが優勢になれば、すべての投票がカウントされ、最も多くの票を集めた候補者が勝者となる。また、候補者は激戦州だけに焦点を当てるのではなく、激戦州ではない小さな州も含めた全国の有権者にアピールしなければならなくなる。

この国が二極化と制度への信頼の低下に取り組んでいる今、この協定は政治への信頼を回復する一助となるだろう。そして、唯一の解決策を提供するのはNPVICで、そして人は人なので、私はひとつだけ力強く助言したい。もっとキャッチーな名前を探すべきだ。

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