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「人種の壁」を超えたヒーローたち...大谷とジャッジが示した「多様性の理想」

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月14日 19時0分

ナ・リーグ本塁打王の大谷(写真)はア・リーグ本塁打王のジャッジとともにその人間的な魅力と実力でアメリカを熱狂させている MARY DECICCOーMLB PHOTOS/GETTY IMAGES

グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)
<「人種のるつぼ」の寛容さが失われつつある時代に、大谷とジャッジが体現した文化と人種の真の多様性>

大谷翔平は私にとって、父と野球をめぐる記憶を呼び起こさせる存在だ。しかし今年のワールドシリーズでは、父と野球についてや、大谷とワールドシリーズについてと同じくらい、アメリカ社会に思いをはせた。アメリカはどうなろうとしているのか、アメリカの理想とは何だろうか。

父が死んでボストンの新聞に訃報が掲載されて間もなく、私の兄弟の元に電話がかかってきた。「私は70年前、12歳くらいのとき、あなたのお父さんを知っていました。彼は20歳くらいでした」と、その高齢の男性は話し始めた。

「1940年頃のことです。地元の公園で私たち近所の子供が野球のチーム分けをしていました。でも、ピッチャーが必要なのに、誰も私を選ぼうとしなかった。ほかの皆はアイルランド系カトリック教徒で、私はユダヤ人だったからです。私は自分が何者であるかという理由で仲間外れにされていました」

「ちょうどそのとき、お父さんが通りかかりました。彼は私たち近所の子供のことを知っていました。そして、立ち止まるとこう言いました。『私が両方のピッチャーをやろう。ただし、(ユダヤ人の)ブルースも一緒にやる。ここでは誰でも遊べる。誰でもみんな。そういうものだ』。あのときのことは今も覚えています。お父さんは立派な方でした」

異人種のバックグラウンドを持つア・リーグ本塁打王のジャッジも人間的な魅力と実力でアメリカを熱狂させている USA TODAY SPORTSーREUTERS

父とユダヤ人少年と黒人少年

ワールドシリーズで大谷自身は不調だったが、ロサンゼルス・ドジャースは「憎まれっ子」ニューヨーク・ヤンキースを4勝1敗で下した(ボストン出身の私としては、「憎きヤンキース」と言わないわけにいかないのだ)。

誰もが見たかったのは、ドジャースの大谷とヤンキースのアーロン・ジャッジの対決だ。大谷よりもさらに体格が良いジャッジは「現役最高の野球選手」の称号を争うライバルであり、大谷と同じくらい礼儀正しく、親しみやすく、慎み深い。そのジャッジも、ワールドシリーズはバットが空を切り続けた。

大谷は第2戦で左肩を負傷した後も出場したが、打席では迷っているように見えた。バットはボールの下を擦り抜け、動きはぎこちなく、三振を喫すると耐えるような表情を見せた。シリーズ打率は1割5厘、5三振、本塁打と打点はなし。第3戦以降、走塁の際は左肩をかばうようにユニフォームをつかんでいた。

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