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「私たちは怪獣じゃない」...総合格闘家のトランス女性が訴える「チャンス・公正・正義」の必要性

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 17時20分

私が相手と互角に戦うために使える数少ない手段を使ったことが問題だった。よくやった、それでこそ男の子だと褒められるどころか、ベルトでこれでもかというほどぶたれた。

妹たちが服を新調するとき、私は彼女たちのお古で我慢した。両親が私の陸上競技会より妹たちのバレエの発表会やチアリーディングの大会やオーケストラの演奏会を優先したときも、我慢した。

家族が私の大学の卒業式には出ず、教会主催の母の日のピクニックに参加することにしたときも、我慢した。

体と心の性のギャップに悩んでいたとき、性転換なんかするくらいなら軍隊に入ってくれたほうがましだと母に言われ、2003年に入隊した。

09年に除隊後は15年に友人の勧めでオレゴン州に移住し、16年にタイで性転換手術を受けた。

絶望感と孤独と不安の中で病院のベッドに寝ている間、手術をしたことが家族にどんな影響を及ぼすかを考えなくてはならなかった。私は家族に気持ちを整理する時間を与える必要があった。彼らが望むような人間に私がなれないという現実を受け入れるための時間を。

偏見や誹謗中傷の中で

総合格闘技(MMA)のトレーニングを始めたとき、授業料を払えば私のような(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーを受け入れるスクールはあったが、クギも刺された。

最初のジムでは、ジムをSNSでタグ付けしないように言われ、女子フェザー級ではなく男子ヘビー級で登録するよう勧められた。別のジムでは男女どちらのトイレを使うつもりかと質問された。

要するに、ジムとしてトランスジェンダーも考慮に入れた方針を定めるつもりはないから、何かトラブルが起きたら自分で個人的に対処しろというわけだ。

女子のセリーヌ・プロボストと対戦した際は、明らかに相手のほうが背も高くリーチも長かったのに、私のほうが有利だと決め付けられた。

私への誹謗中傷の中には、MMAの国際大会のアルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)で私より120ポンド(約55キロ)も重い(男子)ヘビー級選手と対戦しろ、というものもあった。

世間一般の意見は、トランスジェンダー、特にトランス女子はおとなしくしていろというものだった。目立つな。性転換なんかするな。あるヘイト運動は潤沢な資金提供を受けて私たちを排除するよう訴える。女性の地位から。スポーツ界から。公の場から。

偏見を持つ人々の権利や利益と私たちのそれに対して、どのようにバランスを保っていくつもりなのかと聞かれるが、そうするつもりはない。

スポーツ界ではトランスジェンダーの女子選手は統計的に少ない。トランスジェンダーの五輪出場が認められた04年以降、トランス女子のメダル獲得はゼロ。出場資格を認められたのは1人きりだ。

私たちは怪獣なんかじゃない。ただの人間だ。相手より「大きな人間」なんて幻影だ。不安や嫌悪感がつくり出すモンスターだ。「大きな人間」になれと言うのならその糧となる愛と受容、チャンスと公正と正義を与えてほしい。

UNFIGHTABLE | Official Trailer

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