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夫婦間の不仲から米社会の分断まで...「不健全な対立」を「健全」に変える2つの方法

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月19日 10時55分

自分の話をきちんと聞いてもらえていると実感できれば、話し手も冷静になり、自分の話に矛盾点があるなら、自ら進んでそれを認めることもできるようになる。そうすると人は、聞き手に回ったときには同じようにしっかり聞こうとする。

また、例えば「白人」対「黒人」という単純な二項対立だと不健全な対立に陥りやすいが、「白人で男性でサッカーをしていて家族がいて......」と条件を複雑にしていけば、相手と共通する点が見つかり、そこから互いを理解していくことも可能になってくる。

そうやって健全な対立に変えていけば、互いに切磋琢磨し合いながら成長し、よりよい人間となっていけるだろう。大事なのは、他者を思いやること。しかしこれは、簡単なようで一番難しいことかもしれない。

身につまされる「バカ運転手反射」行為の危険性

本書の魅力は、とにかく具体例が豊富なことだ。しかも、成功例はもとより、失敗例も、そこからいかにして軌道修正していくかも記してある。

南米コロンビアのゲリラ戦を背景にした対立から、ギャング間の対立、地方政治における対立など、さまざまな対立を実際に経験してきた当事者への著者渾身の取材活動によって、その悲喜こもごもの生の声が綴られている。

元米国大統領アダムズとジェファーソンの対立や、ニクソン元大統領の娘二人の対立など、読み物としての面白さもある。

身につまされる人が多いのは、著者のリプリーの言う「バカ運転手反射」という対立だろう。自分のことは棚に上げ、他者が信号無視をすると反射的に、その人には道徳的欠陥があると決めてかかる。そんな経験はないだろうか。

もちろん信号無視はいけないことだが、体調が悪いなどの避けがたい理由があったかもしれないのに、そういう可能性は一切考えず、その人の人間性を一方的に断じてしまう。

だが本書を読めば、こうした行為の危険性を理解し、気づかないうちに不健全な対立に陥ってしまうことも避けられるようになっていくだろう。

不健全な対立がしかける「罠」には「足を踏み入れるな」

以下の2カ所は、『よい対立、悪い対立』の原書と邦訳から。

●Conflict becomes necessary and good, instead of just draining.
(対立は、人を消耗させるものから、自分に必要なものへと変わっていく)

──自分の信念は曲げないが、相手の言い分に耳を貸すことですべてが変わっていき、相手を思いやる気持ちも取り戻していける。同意はできないことも、理解はできるようになる。不健全な対立を健全な対立に変えていけば、自分にとってプラスになる。

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