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「眠れる有権者」ヒスパニックが目覚めた...激戦州アリゾナで語った複雑な本音とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 17時0分

「極端な苦難に直面しながら、彼らに救いの手が伸べられることはあまりなかった」と指摘するのは、人種間の社会格差に詳しいアリゾナ大学のリサ・サンチェス助教だ。

「コロナ禍でエッセンシャルワーカーと位置付けられながら、現業職に就いているが故に、(白人など)他のグループと比較して解雇対象になりやすく、家族や友人にコロナで死ぬ人も多かった」

アリゾナ州の22年の世帯収入の中央値は、白人の約7万6000ドルに対しヒスパニックは約6万3000ドルと20%ほど低い。失業率は今年に入って3.9%と、白人(3.0%)より1ポイント近く高い。

100万人を超える国民を死なせたコロナ禍という国難にあったアメリカを下支えした彼らが、貢献を認められず見捨てられたと感じても不思議ではない。政権を代えた大統領選は、ヒスパニックの乱でもあった。

ブルーカラーの労働者が多いヒスパニックは長年民主党を支持する傾向が強く、調査結果によれば今回も約6割がハリスに投票した。

しかし、「ヒスパニックを愛している」と単純なメッセージで秋波を送り、インフレ抑制と不法移民対策という分かりやすく具体的な政策を掲げたトランプのメッセージが浸透したのは明らかだった。

■【関連動画】トランプの発言「ヒスパニックが好き。彼らは温かい。時に温かすぎる」 を見る

一方のハリスは中間層の生活向上や、人工妊娠中絶を中心とした女性の権利、そして民主主義の擁護を掲げた。しかしそれらのテーマはどこか漠然としており、失業やインフレにあえぐ人々の目には物足りなく映ったはずだ。不法移民対策も付け焼き刃だった。

医療通訳者の女性、ガブリエラ・パシオニ(54)は、トランプの強硬な不法移民対策を支持し投票した。メキシコからの留学を経て米国籍を取得したパシオニは「不法移民が、法を守って苦学した自分と同じ立場でこの国にいるのはフェアではない。私は学費を出してくれた両親の苦労を知っているから」と言う。

メキシコを含む中南米地域から入ってくる人々を「レイプ魔」と言い放つトランプに嫌悪感を抱くヒスパニックの知人は、パシオニを「トランプと同じ人種差別主義者だ」と批判するという。「けれど気にしない。不法移民の中には実際に犯罪者がいてホームレスになる」

拡大し続けるその政治力

アリゾナ州教育省の公務員ロベルト・ガルシアも、熱狂的なトランプ支持者だ。民主党政権下のアメリカを沈みゆく船に例え「前の艦長は良かった」と、トランプの返り咲きを喜んだ。ガルシアは現在54歳で、メキシコ系の家庭に生まれた。

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