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ルーマニア大統領選、「SNS戦略」成功でプーチン賛美の「極右」が予想外の首位...若年層の不満を代弁

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月26日 17時14分

ルーマニア大統領選で首位になったジョルジェスク候補(11月13日) Inquam Photos/Octav Ganea via REUTERS

木村正人
<ルーマニア大統領選第1回投票で、「ウクライナ戦争の背後で『帝国主義』軍産複合体が暗躍」と訴えるジョルジェスク候補が首位に>

[ロンドン発]ルーマニア大統領選の第1回投票が11月24日行われ、親露派で反北大西洋条約機構(NATO)の極右ナショナリスト候補カリン・ジョルジェスク氏が212万票(得票率22.9%)を超える予想外の大躍進を見せ、首位で12月8日の決選投票にコマを進めた。

ジョルジェスク氏はウラジーミル・プーチン露大統領を称え、ウクライナ戦争の背後で「帝国主義」軍産複合体が暗躍していると唱える。事前の世論調査では社会民主党(PSD)代表のマルチェル・チョラク首相が圧倒的にリードしており、ジョルジェスク氏は完全なダークホースだった。

クラウス・ヨハニス現大統領はNATO事務総長になるべく働きかけたものの、事務総長にはオランダのマルク・ルッテ前首相が就任したばかり。ルーマニアはNATO同盟国として国防予算をNATO目標の国内総生産(GDP)の2%を上回る約2.5%に引き上げている。

ジョルジェスク氏は1962年ブカレスト生まれ。ブカレスト農業科学獣医学大学で博士号を取り、国連やローマクラブ欧州支援センター会長など持続可能な開発に関する役職を歴任。大統領選には無所属で立ち、農家支援、エネルギー・食料の自給志向、輸入依存からの脱却を唱えた。

ホロコーストに加担した第二次大戦指導者を称賛

ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に加担して銃殺刑になったルーマニアの第二次大戦指導者イオン・アントネスクや、欧州で最も暴力的な極右の反ユダヤ主義民族運動「鉄衛団」の創設者コルネリウ・コドレアヌを国民的英雄と呼ぶ極右ナショナリストだ。

政治スタンスは親露。ルーマニアのNATO加盟に反対する。NATOが加盟国を守る能力に懐疑的な一方、ルーマニアは外交的・戦略的判断を下す準備ができておらず 「ロシアの知恵 」に従うべきだと主張する。しかし実際にロシアを支持するかどうかについては名言を避けている。

「私は不当な扱いを受けた人々のために投票した」

ルーマニアはフランス率いるNATO多国籍戦闘部隊と米軍のミサイル防衛施設を受け入れており、ジョルジェスク氏は「外交の恥」と批判。ジョルジェスク氏の躍進は主流政党に対する広範な不満を反映しており、自らを社会や経済から取り残された人々の代弁者と位置づける。

投票後、フェイスブックに「私は不当な扱いを受けた人々、屈辱を受けた人々、この世で自分は重要でないと感じている人々のために投票した! 投票は国家への祈りだ」と投稿した。より多くの有権者にリーチするため動画共有サイトTikTokなどSNSを効果的に活用した。

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