引責辞任したカンタベリー大主教のセレブで偽善的でえげつない素顔
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月30日 16時23分
大主教としての彼の給料は実際、結構な金額だったし、どんな職業だって得られるものは金銭ばかりではない。大主教でいえば、亡くなった君主の国葬を執り行い、さらには新たな君主の戴冠の役目を担うことで、歴史に名を刻むことができるのだ。
僕が興味深く感じたのは、ウェルビーがかつて石油業界で働いていたのに、大主教として環境問題にたいそうな主張をすることを何らためらっていないように見えたところ。彼は気候変動対策の失敗を「ジェノサイド」に例えた。これは強い言葉であり、必ずしも不適切というわけではないが、彼はそれを言うのにふさわしい人物だったのだろうか?
同様に、彼は亡命希望者に対する英政府の厳しい政策を批判し、ひいては移民受け入れ規模を縮小したいと考える有権者たちまで遠回しに非難を向けることになった。奇妙なことに彼は、自分の一族の富が大部分はかつての奴隷貿易によって築かれたという事実のおかげで、どういうわけか人種差別主義の愚かさを声高に追及する使命を自分が与えられたとでも考えているようだ。おまけに彼の曽祖父は、英領インドの植民地行政官の関係者だった。
彼は、自分の一族の歴史を「深く悔やんでいる」と言いながらも「わが国の恥ずべき過去」について語り、まるでイギリス社会全体も責任を分かち合うべきだとでも言いたげだ。イギリス人の大多数はむしろ、奴隷所有は一部の少数派による黒人への重大犯罪であり、多数派の白人同胞たちに対して自らの一族が子孫代々まで続く優位な地位を築くための手段だった、というふうに考えている。
奴隷制という不道徳なビジネスのおかげで高い社会的地位を確立しながら、今やこの悪を「反省」し、その学びを人々に伝えることで独善に浸る――そんなふうに奴隷制によって「第2弾の」名声を得ているのは、ウェルビーだけにとどまらない。
僕はウェルビーを悪人だとは思わないが、偽善の匂いと自己認識の欠如には吐き気を覚える。エスタブリッシュメントの「典型」に見えるからだ。
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