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究極のリサイクル? 死後も役立つ「堆肥葬」が広がる背景

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月3日 13時20分

課題はいくつもあるが

堆肥葬合法化法の動きの背景にあるのは、人々の関心が増すなかで、埋葬をめぐる新たな選択肢を支持する個人や団体の声が高まっていることだと、アース・フューネラルのモリスは言う。

「この選択は特に個人的なものなので、当社は誰もが自分にとって最も適した方法を選べることを何よりも重視している」

遺体に模した植物で棺に納めた様子を実演 RECOMPOSE

リコンポーズのヤーボローによれば、合法化はアメリカでの堆肥葬実用化への重要なステップだが、法案成立後もいくつものステップが必要だと言う。業界のリーダーたちは政府、保健当局、葬儀場・墓地の役員らと協力して規則や規制を堆肥葬に合うように変えなければならない。

このプロセスを約1年で終えられる州もあるが、カリフォルニア州では企業が堆肥葬サービスの提供を開始できるのは、法律が発効する27年以降だとヤーボローは言う。

ニューヨーク州では22年に州議会が堆肥葬を合法化して以降、クライアントからの関心が増していると、ニューヨーク市のエコ葬儀会社フィッティング・トリビュート・フューネラル・サービシズの創業者で葬儀ディレクターのエイミー・カニングハムは語る。

ニューヨークは昔から葬儀関連の政策に「慎重で保守的」だが、合法化法案の成立は「利用者がよりエコな方法にいかに積極的かの証し」だと言う。合法化は少々意外で、大きな政争がなかったのは推進派のほうが反対派より組織化されていたからだとカニングハムは指摘する。

ニューヨーク州では、堆肥葬合法化後も実用化には至っていない。サービスを提供する施設がまだ西海岸にしかないためだ。業界関係者は施設の立地やムラサキウマゴヤシなど必要な材料の入手方法を含め、実用化の方法を模索中だ。

最期まで環境に優しく

「多くの人々が期待に胸を膨らませる一方、どうすればうまくいくか慎重に見極めようと、周囲の出方をうかがっている」と、カニングハムは語った。

賛成一色だったわけではない。反対派の筆頭格はカトリック教会だ。

昨年3月、米国カトリック司教協議会(USCCB)の協議委員会は堆肥葬に反対する覚書を発表。土葬が望ましいというのがカトリック教会の長年の見解だが、火葬についても遺灰が「神聖な場所に安置される」ことを条件に認めている。一方、堆肥葬は「遺体に十分な敬意を払っていない」と、同委員会は結論した。

それでもカニングハムによれば、堆肥葬への関心は増している。「ヒッピー的」な自然回帰を求める人たちばかりではなく、もっと環境に配慮すべきだと考える保守的なキリスト教徒なども関心を持っていると言う。

「大地の善き管理者となることも生きることの一部」だと、カニングハムは言う。「私の番が来たら、環境に配慮し、生分解可能で(防腐処理などで)大地を汚染する心配のない葬儀にしたい。わが社のビジネスは環境に優しい葬儀を軸にしており、会社は間違いなく成長している」

死後も肉体が大地の役に立つ。「誰もが最期に残したい、復活・再生・新たな命という究極のメッセージだ」

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