ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」なのか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月4日 11時52分
北島 純
<神戸学院大学の上脇博之教授と郷原信郎弁護士が、公職選挙法違反の疑いで再選された兵庫県の斎藤元彦知事とPR会社社長に対する告発状を神戸地検と兵庫県警に提出した。PR会社社長と社員の選挙活動の実態解明が焦点になるが、政治資金規正法では「会社」による「選挙を含む政治活動」への「労務の無償提供」は違法とされている>
斎藤元彦氏が劇的再選を果たした11月17日の兵庫県知事選挙から3日後。西宮市の広報PR会社の社長がコンテンツ配信サイトnoteに投稿した記事が波紋を広げている。斎藤陣営で「広報全般を任せていただいた」として、公約スライドの作成、ポスター・チラシ・選挙公報のデザインからX(旧ツイッター)やYouTubeといったSNS公式アカウントの立ち上げ・運用に至るまで、多様な「仕事」を行っていた実態を公開したのだ。直後から「この『仕事』は公職選挙法に違反しているのではないか」という声が上がり始めた。
日本の公職選挙法は、公正な選挙実現と腐敗防止の観点から「選挙運動は無償が原則」という建前を採用し、金銭の授受を伴う選挙運動には厳しい制限が課せられている。
まず候補者以外で選挙運動に携わる人間は「選挙運動に従事する者」と「選挙運動のために使用する労務者」に分けられる。交通費や宿泊費は両者とも受け取ることができるが(実費弁償)、労働の対価として報酬をもらえるのは労務者だけ。選挙運動従事者(選挙運動員)に報酬を支払うと、支給した候補者に買収罪、もらった者に被買収罪が成立する。
では選挙運動員と労務者はどう分けられるのか。最高裁は1978年に富山市議会議員選挙の運動員買収事件をめぐって、有権者に対し「直接に投票を勧誘する行為または自らの判断に基づいて積極的に投票を得るために直接、間接に必要、有利なことをする行為」を行うのが選挙運動に従事する者であり、それ以外の労務に従事するのが労務者であると判断している。
つまりハガキの宛名書きやポスター貼りのような単純作業をするから労務者とされるのではなく、機械的な労働であっても「自らの判断に基づいて積極的に」候補者を当選させようという目的があれば選挙運動員、目的がなければ労務者とされる。
今回の事件で明らかになっている金銭の授受は現時点で、ポスター、チラシ、スライドなどの制作費用計71万5000円だけ。斎藤知事の弁護士は、選挙告示前の「立候補準備行為」の対価であり違法性はなく、またこれ以外に一切払っていないと主張している。しかし、不自然な点は残る。
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