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強力な視覚体験に支配される「ミラサォン」とは何か?...アヤワスカの科学的研究

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月14日 9時50分

 

わたしがこのとき痛感したのは、病院内に設置された磁気共鳴スキャナーの中にアヤワスカの体験を持ち込むことの難しさだ。

これが困難な理由としては、上述した生理的変化のほか、ボランティア参加者たちの信仰が挙げられる。彼らにとって、スキャニングを受けている状態で精神世界に入り込むというのは容易なことではなかった。

ボランティアたちは、サント・ダイミ教を信仰していた。サント・ダイミは、ウニオン・ド・ベジェタルやバルキーニャといった教団と並んで、アヤワスカを聖餐として用いる主要な混交宗教の1つだ。

アマゾンの熱帯雨林のシンボルに根ざしたこの混交宗派を実践する人たちにとって、魂が苦悩して頻繁に肉体を離れると信じられている病院という環境にいることは、とりわけ大きな負担となる。

アヤワスカを摂取する前後のデータを比較したところ、視覚、エピソード記憶の回復、意図的・予想的な想像に関連する脳皮質のさまざまな領域において、脳活動の増加が見られた。

その視覚領域は、夢や精神病性の幻覚を見ている最中に活性化される領域と一致しており、さらには、解剖学的に網膜に最も近い皮質領域である一次視覚野の活動は、アヤワスカ摂取後に体験される精神病のような症状と強い相関を示していた。

加えて、脳の異なる部位の間の関係にも有意な変化が見られ、脳活動の大々的な機能的再編成が起こっていることが明らかになった。

この結果は、目を閉じた状態で見ようとする──すなわち想像しようとする──活動が、アヤワスカの影響下においては、想像上の光景をかなりはっきり見ているという感覚を実際に生み出していることを示唆している。

この4年後には、インペリアル・カレッジ・ロンドンの英国人薬理学者デビッド・ナット率いるグループが、LSDを用いて同様の結果を得ている。同研究では、目を閉じている状態でも視覚系が強力に活性化することが示された。

 

シダルタ・リベイロ(Sidarta Ribeiro)
ブラジルのリオグランデ・ド・ノルテ連邦大学脳研究所の創設者で初代所長、神経科学科教授。ロックフェラー大学で動物行動学の博士号を取得。研究テーマは、記憶、睡眠と夢、ニューロンの可塑性、人間以外の動物の記号能力、計算精神医学、幻覚剤、薬物政策など多岐にわたる。著書に『Limiar: Ciência e vidacontemporânea(閾値――科学と現代生活)』のほか、眠りやニューロテクノロジーについての著作が数冊ある。

 『夢は人類をどう変えてきたのか──夢の歴史と科学』
  シダルタ・リベイロ[著]
  北村京子[訳] 須貝秀平[監]
  作品社[刊]

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ドキュメンタリー「アヤワスカの力」

The Nature of Ayahuasca (2019) Documentary

 

「サイケデリックな治癒力」

We Went to an Ayahuasca Retreat to Experience its 'Psychedelic Healing Powers'




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