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「新疆綿使っていない」発言と、ユニクロ好きが消えた中国

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月14日 21時18分

©2024 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

風刺画で読み解く中国の現実
<ユニクロ創業者の柳井正氏が「新疆綿を使っていない」と発言。中国ネットで不買の声が上がったが、そもそも中国はユニクロ愛好者だった中産階級が「消滅」しかけている>

ユニクロ創業者の柳井正氏が最近、英BBCのインタビューでユニクロは中国の新疆綿を「使っていない」と発言。「感情を傷つけられた」中国人が、ネットで不買の声を上げ始めた。

意外なことに、中国の官製メディアは対立をあおらず、中国外務省のスポークスマンも慎重かつ控えめな反応を示しただけだった。経済の低迷が深刻な中国は、できるだけ早く隣国・日本との関係を修復したいのだろう。この直後、中国は日本人の短期滞在ビザを再び免除にし、滞在期間も15日から30日に延長した。中国で約1000店舗を構え、大納税者でもある「優衣庫(ユニクロ)」がもし中国から追い出されたら、政府の税収の損失だけでなく、多くの人々を失業させることになる。「わざと自分の足を撃つ」自信は、今の中国にはない。

しかし柳井氏の発言があろうがなかろうが、中国における「ユニクロ人気の春」は既に過ぎたようだ。

中国メディアの澎湃新聞は先日、「ユニクロを買わない理由」というネット世論調査を実施した。その結果、2万人を超える回答者の半数近くが「値段が高くなった」という理由を選んだ。「ユニクロのTシャツは1枚100元(約2000円)するが、淘宝(タオバオ)のネットショップなら同じ値段で似たようなTシャツが2、3枚買える」。低価格だったはずのユニクロ製品は、中国製品と比べてもはや「お買い得ではない」のだ。

そんな中国に見切りをつけた?

今から10年ほど前、経済成長で中産階級が台頭してきた中国では、「高品質・低価格」な中産階級向けブランドであるユニクロや「無印良品」が、その上質で快適、シンプルな都会スタイルで人気を集めた。しかし現在、若者の高失業率や減給、中高年層の破産の増加で、中産階級の財布は枯れ始めている。

一国の中産階級の凋落は、都市生活の衰退、大衆文化の貧困化、極端な格差と不平等の拡大そして社会的連帯の崩壊を招く。最近中国で無差別殺傷事件が多発しているが、車を使った暴走事件が多いのは、枯れ果てた中産階級の絶望ゆえではないか。かつて夢があった中産階級の絶望は、もともと車も何もない貧しい人々の絶望よりもはるかに恐ろしい。

ユニクロの柳井氏もそんな中国に見切りをつけ、あえてこの発言をしたのかもしれない。

ポイント

新疆綿
世界三大綿の1つ。中国政府が新疆ウイグル自治区でイスラム教徒ら少数民族を弾圧していると報じられたことをきっかけに、2021年から多くのブランドが使用を取りやめた。

淘宝
アリババが運営する中国のECサイト。2003年にサービスを始めた。決済にはアリババの電子マネーであるアリペイ(支付宝)が使われる。チャットで商品の値引き交渉も可能。

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