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医療保険CEO銃殺事件が映すアメリカの現在

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月11日 14時0分

また、事件の前後に使用した偽の免許証も見つかり、警察は偽造文書所持で逮捕、更に現在は殺人の容疑も加わっています。容疑者は、メリーランド州の裕福な家族の出身で、アイビーリーグに属するペンシルベニア大学(Uペン)を卒業後、ゲーム業界に勤務していたコンピューター技術者でした。

容疑者の所持していた宣言文には、巨大企業への批判、そして医療保険業界への批判が延々と綴られていました。20世紀末に大企業批判などのメッセージを込めて爆弾テロを繰り返した「ユナボマー」の思想にも影響を受けているという説があります。

容疑者は護送される際にメディアを口汚く罵ったり、かなり偏った人物のようです。また、自身の背中の怪我の治療に関して、保険会社とトラブルになったのが凶行への契機となったという説もあります。いずれにしても、思い詰めた若者による全くの一匹狼的な犯行のようです。

そうではあるのですが、事件への反響は大きくなっています。事件発生後は息を潜めて見守っていた感じのある世論ですが、特に若者のネット世論の間には容疑者を賛美するような動きが見られます。殺されたトンプソン氏がトップであったユナイテッドヘルスに関しては別の幹部が「保険金支払いを渋るように」指示しているとされる動画が出回って炎上しています。

また、容疑者を発見して通報したマクドナルド店舗の検索レビューには、嫌がらせの書き込みが後を絶たないようです。この事件を契機に、曲がりなりにも国民皆保険を実現した通称オバマケアが、民間の保険と政府の補助という組み合わせでできていることへの批判が改めて起こっています。これは、民主党左派の主張です。

大統領選に勝利したトランプ次期大統領は、2021年1月6日の議事堂襲撃事件で逮捕された被告たちへの恩赦を明言しています。分断されたアメリカの中で、自分を支持してくれる人間については、暴力も容認する姿勢と言わざるを得ません。その一方で、民主党左派の側にも、保険制度の改革を熱望する余りに、今回のような経済人へのテロを賛美するような風潮があるとしたら、トランプ氏を批判することはできなくなってしまいます。容疑者の動機について、更なる解明が待たれます。

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