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ウクライナ侵攻によるロシア兵の死者は11万5000〜16万人に、兵士を「使い捨てる」ロシア軍の残酷物語

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月16日 13時29分

一部の推測では、ロシア軍は10月だけで戦車、歩兵戦闘車、航空機など計500台以上を失った。第1次チェチェン紛争のグロズヌイの戦い(1994〜95年)の2倍の量だ。

当時の甚大な損失は、ロシアの軍と社会の雰囲気を著しく悪化させた。現在、ロシア最大の軍備基地の一部は空っぽで、ソ連時代の戦車や装甲車まで前線に引っ張り出されている。

ただ、ロシア兵に関しては、政治家やメディアに登場する識者、そして市民さえも、その命をひどく軽んじていて、それを隠そうともしない。

戦場に送られた兵士の帰還を求める妻たち(24年2月) GETTY IMAGES

今回のウクライナ戦争で、ロシア軍が空挺部隊や特殊部隊などのエリート部隊を大量投入して一気にケリをつける戦略から、第2次大戦中のような人海戦術に切り替えたのは、22年5月に始まったバフムートの戦いだった。

厄介な部下は前線送り

これはミートグラインダー(肉ひき器)戦術とも呼ばれ、膨大な数の兵士を前線に送り込むことで、ウクライナ軍を疲弊させるとともに、その位置をあぶり出して爆撃する。

この戦術をバフムートで採用したのは、当時ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いていたエフゲニー・プリゴジン(23年8月に死亡)とされる。しかもプリゴジンは、この「使い捨て兵士」に、受刑者と法外な報酬を求める傭兵を充てた。

ロシアは1年間にワグネルの傭兵だけで2万人以上を犠牲にして、廃墟と化したバフムートを制圧した。以来、ミートグラインダー戦術はロシア軍全体に採用され、それとともにロシア兵の死者数は近年の軍事史上例を見ないほど膨らんでいった。

今年2月に展開されたウクライナ東部の町アウディーイウカをめぐる戦いでは、少なくとも1万6000人のロシア兵が命を落とした可能性がある。

ロシア軍の人命軽視の表れは人海戦術だけではない。ウクライナの民間人に対するレイプ、拷問、殺害、誘拐といった蛮行は世界を驚愕させてきた。捕虜となったウクライナ兵の処刑も日常的に行われている。

蛮行の矛先は、ロシア軍内にも向けられている。ソーシャルメディアには、上官の命令を拒否したり、疑問を呈したりしたために拷問を受けたり、重傷を負っているのに前線に送られたりする兵士の映像が大量に存在する。

さらに前線では、ソ連時代のような督戦隊が後方に控えていて、敵前逃亡や投降を図る兵士を射殺している。

このような状況では、自ら命を絶つロシア兵が後を絶たないと聞いても驚きではない。

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