電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千年稼働」の世界
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月12日 18時20分
ジェス・トムソン
<充電不要で数千年稼働するダイヤモンド電池が発表された。炭素14の放射性崩壊を利用した仕組みは、極限環境での活躍を見込まれている>
何千年にもわたって医療機器や宇宙船に電力を供給し続けられるというダイヤモンド製の電池を研究チームが発表した。
この電池は、放射性同位元素の「炭素14」をダイヤモンドで取り囲んで電気を起こす。普通の電池に比べて飛躍的に長持ちすることから、医療機器や、宇宙空間のような極限環境でさえも使用できる。
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「ダイヤモンド電池はマイクロワット級の電気を安全かつ持続的に供給できる。これは人工ダイヤモンドを使って少量の炭素14を安全に封じ込める新興技術だ」。イギリス原子力公社(UKAEA)トリチウム燃料サイクル局長のサラ・クラークは声明でそう述べている。
新型電池はUKAEAとイギリスのブリストル大学が共同開発。ダイヤモンドの中に閉じ込めた炭素14同位元素の放射性崩壊を利用する仕組みを備える。
同位元素とは、原子核に含まれる陽子の数が同じで中性子の数が異なる化学元素のことで、安定同位元素と、時間が経つにつれ放射線を放出しながら崩壊していく放射性同位元素がある。炭素14は放射性同位元素で、ベータ崩壊を起こして電子を放出する。
ダイヤモンド電池は、太陽光パネルで光を電気に変換するように、ベータボルタ効果と呼ばれるプロセスを通じて放射性崩壊を電気に変換する。炭素14の半減期は約5730年。つまりこの電池は理論的には数千年間、持続できる。ただし出力は時間とともに低下する。
こうした電池は眼球インプラントや補聴器、ペースメーカーなど充電や電池交換なしで長期間稼働させなければならない医療機器のほか、メンテナンスが非現実的な宇宙船や人工衛星、遠隔センサーなどに使うことも期待される。
ブリストル大学材料学教授のトム・スコットは、「我々のマイクロパワー技術は宇宙技術やセキュリティ機器から医療用インプラントに至るまで、重要なアプリケーションに幅広く対応できる。今後数年かけて産業界や研究界のパートナーと連携しながら、あらゆる可能性を探求できることに期待している」とコメントした。
ダイヤモンド構造は崩壊に伴って放出される放射線を閉じ込めることもできるため、人や環境にとっての安全性も保証される。
ブリストル大学化学校のニール・フォックスは先にこうコメントしていた。「炭素14を材料に選んだのは、どんな固形物にもすぐ吸収される短距離放射線を放出するという理由だった。吸入したり素肌に触れたりすれば危険だが、ダイやモンドの中に安全に格納することで、短距離放射線は脱出できない」
「実際、ダイヤモンドは人が知る限り最も硬い物質であり、文字通り、我々が利用できる中でこれ以上に守りが堅いものはほかにない」
(翻訳:鈴木聖子)
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