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「中東」とは、どこか?...英語とフランス語の「言葉のズレ」と3つの大きな戦争から再考する

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月21日 10時15分

北アフリカはヨーロッパから見ると南であり、決して東ではないが、にもかかわらず、場合によっては「中東」に含めることもあるのは、北アフリカがアラビア語の話されている地域だからだ。

文明論的な対立としての「東方問題」(本書にて詳述)の文脈である。地理的には南にあろうと、地政学的には「東」という解釈になる。

ヨーロッパよりも西側に位置するモロッコのアラビア語の名称〈マグレブ〉の語源は、「日の没するところ」すなわち「西」である。

 

しかし、モロッコを含むアラブ世界がヨーロッパ世界から見て「東方」と呼ばれているのも、「東方問題」の文脈によるという、まったく同じ理由からである。ただし、一般的にはモロッコはオスマン帝国領でありながら「東方問題」の対象には入っていない。

具体的に、オスマン帝国を正面に据えて、「近東」(Near East)、「中東」(Middle East)、「中近東」(Near and Middle East)という、用語の中に「東」(East)を含む地域名称を時期にしたがって整理してみよう。

この場合の時期区分の基準は3つの大きな戦争、すなわち、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして米ソ冷戦の終焉(ソ連の崩壊)である。この3つの戦争によって、特定の国家がその勝敗によって滅びたり、生まれたりして国境線の変更を伴うからである。

臼杵 陽(Akira Usuki)
1956年、大分県生まれ。在ヨルダン日本国大使館専門調査員、佐賀大学助教授、国立民族学博物館教授を経て、日本女子大学教授。博士(地域研究)。著書に『イスラエル』(岩波新書)、『世界史の中のパレスチナ問題』(講談社現代新書)、『日本人にとってエルサレムとは何か』(ミネルヴァ書房)、『「ユダヤ」の世界史』(作品社)、『日本人のための「中東」近現代史』(角川ソフィア文庫)など。

 『日本人のための「中東」近現代史』
  臼杵 陽[著]
  KADOKAWA[刊]

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