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ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月21日 15時5分

ホームレスの中には、以前はさまざまな仕事をしていた人たちがいる

会社の倒産、リストラ......それぞれの理由

私が取材をしているのは荒川河川敷に暮らすホームレスだが、他の地域のホームレスたちも当然、それぞれに事情を抱えている。

「下町ぶっとびTV」というドキュメンタリーのYouTubeチャンネルには、給料をもらえず、会社を転々として、ホームレスになった江戸川河川敷のホームレスが登場する。

最初は大工に弟子入りをしたが、親方に借金があって、弟子に給料を払えなくなった。次に入った会社の社長は元暴走族で、いろいろと問題があり、会社がつぶれた。転職して型枠大工の仕事を始めたが、今度は社長が酒を飲み過ぎて死んでしまったそうだ。その後は再就職をあきらめ、ホームレスになることを選んだという。

一方、20年以上前の日本のテレビのドキュメンタリーで、新宿の親子ホームレスを取り上げたものがあった。親子は栃木県のホテルで一緒に働いており、父はそこの副支配人も務めていたが、息子は軽い知的障害があった(母は息子が3歳の時に離婚しており、家を出ている)。

親子は共にホテルにリストラされ、家賃が払えなくなって、やむなく上京する。東京の親戚を頼ったが、結局、夜はシャッターが降りた後の階段の踊り場で過ごし、昼は飲食店の裏に捨てられていた食べ物で空腹を満たす生活になったという。

絶望から希望への「緩衝期」が得られるはず

日本人が他人に迷惑をかけないことを重視しているのは、よく知られている。自分が困っていて、生活を維持できないような場合でも、他人に助けを求めるより自殺を選んでしまう人がいる。本当に他に選択肢はないのだろうか。

そんな時は、ホームレスになろう――。極端な意見に聞こえるかもしれない。もちろん、路上生活を誰にでも推奨するわけではないが、これまで荒川河川敷で交流と取材を続けてきた私は、それも1つの道だと信じている。ホームレスになることで、絶望から希望への「緩衝期」が得られるはずだ。

キリスト教には「神は扉を一つ閉じれば、必ず窓を一つ開けてくださる」という教えがあるという。日本ではこの窓が「ホームレスの窓」なのではないか。窓の向こうには、お金がなくても、生きていける世界が広がっている。

私が言いたいことは、ホームレスという存在は、さまざまな理由で人生に行き詰まった人々の貴重な命を延長することに直結しているというものだ。

[筆者]
趙海成(チャオ・ハイチェン)
1982年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。1985年に来日し、日本大学芸術学部でテレビ理論を専攻。1988年には日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わり、初代編集長を10年間務めた。現在はフリーのライター/カメラマンとして活躍している。著書に『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)、『私たちはこうしてゼロから挑戦した──在日中国人14人の成功物語』(アルファベータブックス)などがある。

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