大統領の「自爆」クーデターと、韓国で続いていた「軍人政治」
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月26日 11時26分
主要政党が自分たちを「愛国者」と位置付け、対立政党を「裏切者」と批判するとき、民主政治の基盤は常に揺らぐ。韓国ではそのような政治文化の下、保守派が人気ドラマ『愛の不時着』を「北朝鮮を美化して国家安全保障法に違反している」とやり玉に挙げたこともあった。
尹のクーデター未遂の背景には、大統領の汚職疑惑と逮捕への不安があった。韓国の歴代大統領はしばしば、自身の生き残りと国家の防衛を同一視してきた。今回の騒動では、国会が戒厳令の解除を求める決議を可決したにもかかわらず、高い地位に就いている職業軍人たちは、尹が戒厳令解除の方針を示すまで国会の要求に従うことを拒み続けた。
政党や軍や政治家より「法の支配」を重んじる
皮肉なことに、尹は検察官時代の16年に朴の汚職疑惑の捜査を指揮した人物だ。その捜査をきっかけに朴の弾劾手続きが始まり、戒厳令の宣布が水面下で準備されるに至った。今回のクーデター未遂では、尹自身も民主主義者というより、儒教的な独裁者だったことが明らかになった。
それとは別に、もう1つ明らかになったことがある。尹の戒厳令宣布に対して韓国社会がほぼ足並みをそろえて反対し、その企てを失敗に追い込んだことは、韓国の政治文化に強力な民主主義的性質が根付いている証拠だ。政党や軍や政治家よりも法の支配を重んじる考え方が、そこには確かにあった。
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