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ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月15日 13時40分

問題は、火災保険制度の今後です。今回の被災のほぼ100%が補償されるということは、火災保険金の支払いも天文学的な数字になります。各保険会社は、再保険(保険金支払いに備えた保険)に入っていますから最終的な負担は、再保険業界に回りますが、その負荷は甚大な規模になると言われています。また公的保険「フェア」も加入している被災者に払う保険金が大きな負担になるでしょう。

そうなると、民間の保険会社は益々この地域の火災保険から手を引くことになります。となれば公的保険「フェア」への移行が拡大し、次に大火災が起きた場合には「フェア」が破綻してしまうとか、税金を通じて補填することで州民の負担が拡大することになります。州政府など行政サイドは、とりあえず「山火事を契機とした民間保険の撤退」を1年間凍結、つまり「撤退を認めない」という措置を取りましたが、その後はどうなるか分かりません。

これはカリフォルニアの政治にも影響を与えると思います。今回の大被害は、一種の人災だとしてトランプ陣営は、ニューサム知事以下、民主党によるカリフォルニアの州政への批判を強めています。そんな中で、女性消防総監だから防火と鎮火に失敗したなどという差別的な言いがかりも横行しています。それはともかく、一連の経緯、そして共和党サイドの批判を受けて、ニューサム知事や、同じくカリフォルニアの民主党政界を代表するカマラ・ハリス氏の全国的な人気が傷付いたのは間違いありません。

ですから、今回の山火事によって2026年の中間選挙や、2028年の大統領選への影響が起きるのは避けられないでしょう。次のカリフォルニア州知事選挙は2026年で、現職のニューサム氏は2期の任期満了となって再選には出られません。では、そこで共和党が知事の座を奪還できるかというと、そう簡単ではないと思います。例えば、この火災保険の問題について「保険会社は守る」「公的保険への税金の投入は拡大しない」というような政策を取ると、有権者がソッポを向くこともあり得るからです。

とりあえず、この悲惨な大火は「カリフォルニア民主党」を更に退潮へ追い込んでいるのは間違いないと思います。ですが、やがて発生すると思われる火災保険に関する論争については、共和党にも難題になると思います。

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